大規模個展を開催中の写真家、石内都をデザイナーの山縣良和が直撃! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook-a facebook instagram line twitter youtube

大規模個展を開催中の写真家、石内都をデザイナーの山縣良和が直撃!

横浜美術館で大規模な個展を開催中の石内都。石内作品にコレクションのヒントを得たというファッションブランド〈writtenafterwards〉デザイナーの山縣良和が、会場に石内を訪ねた。世代もジャンルも違う二人が、「服」をキーワードに初対談。

広島の被爆者の遺品を被写体とした《ひろしま》や、アーティストのフリーダ・カーロの遺品を撮影した《Frida by Ishiuchi》など、粒子の粗いモノクローム写真で人間の記憶と時間の痕跡を記録し続ける写真家、石内都。2014年に写真界のノーベル賞、ハッセルブラッド国際写真賞をアジアの女性として初めて受賞するなど、国内外から高い評価を受けている。そんな最も待ち望まれた写真家の大規模個展が今、〈横浜美術館〉で開催中だ。会場には石内の写真家としての本格的なデビューとなった個展『絶唱、横須賀ストーリー』(1977年)以前に横浜を撮影した最初期のシリーズから最新作まで、40年にわたる創作活動における代表作約240点が集い、石内が写真を撮り始めた地である「横浜」、銘仙などの絹織物を撮影した「絹」、女性の傷跡を撮影した「無垢」、そして遺品を撮影した「遺されたもの」の4つのテーマに分けて展示されている。

昨年、東京都庭園美術館で「アフターウォーズ」というタイトルで日本の戦前・戦中・戦後をテーマとした2018年春夏コレクションを発表した〈writtenafterwards〉の山縣良和。そのコレクションのインスピレーションソースの一つになったのは、石内都の代表作《ひろしま》だったという。石内の展覧会場にも「服」の写真が溢れている。しかし、広島の被爆者の遺品を撮った《ひろしま》も石内の生まれ故郷である群馬県桐生に残されていた絹織物「銘仙」を撮った《絹の夢》も、それらはすべて亡くなった誰かの着ていたものだ。今は亡き人の「服」を撮り続ける石内都と、これから誰かが着る「服」を作る山縣良和が、「服」を通して向き合った。
『石内 都 肌理と写真』展の会場で話す石内都と山縣良和。背後に展示されているのは、石内が遺品を撮るきっかけとなった亡き母のシリーズ《Mother’s》(右2点)と2007年より石内が撮り続けている《ひろしま》のシリーズ(左2点)。
山縣良和 石内さんの写真に勝手に親近感を抱いていました。もともと多摩美術大学で染織を専攻していましたよね。僕はファッションを生業としているので、グッとくるものがあって。
石内都 私は山縣さんのことを全く知らなかった(笑)。ごめんなさい(笑)。ファッションは好きだし興味はあるけど、ファッションの仕事は全部断ってきたから全くわからなくて。今回出品しているお父様の遺品を撮影したリック・オウエンスのことも最初は知らなかったんです。彼のお父様は進駐軍の人でした。遺品とリックのコレクションを撮ってほしいと連絡がきて、最初は断ったのだけれど3回頼んできたので引き受けました。普通、そんなに頼まないじゃない。
山縣 そうですね。
石内 会ってみたら遺品が着物だとわかってびっくりしました。着物にすごく興味があったのです。自分で全部着られますしね。私はいかに崩して着るかだけれど(笑)。
山縣 だから石内さんの着物の写真にはちょっと違和感を感じるのかもしれないですね。着物の色合いも柄もツイストがかかっていて、日本人の感覚からこんなの出てくるのかなって。
石内 銘仙は本当に革命的な着物だったんです。伝統を全く無視して。
山縣 柄で遊んでいますよね。
石内 世界中のグラフィックからとっているのよ。それが面白い! 銘仙は今までの着物の文化に真っ向から挑んできたような着物なので、そこが気に入って撮りました。
空間中を埋めつくすのは、《絹の夢》と「背守り」と言われる子供のために縫われた着物を撮影した《幼き布へ》のシリーズ。絹の布が銀色の壁に垂れ下がっている様子をイメージしたそう。
ファッション・デザイナー、リック・オウエンスの亡き父の着物を撮影した作品。
山縣 以前、石内さんは写真の撮影があまり好きではないと言っていましたよね。
石内 嫌いなものはすごく残る。だから私はそっちに興味があった。普通、写真を始める時は好きなものを撮るけれど、私はそうではなくて、一番自分の中で気になっていて解決できないものを撮ろうと思ったんです。写真を習ったことがないから独学で間違えながら学んできました。だから自分で発見してきた写真です。写真の撮り方も変わっているらしいの(笑)。中心がずれていたり斜めになっていたり。私はその時の空気とか匂いとか距離を撮っています。結果的に写っているということで、手ぶれしたり、ピントが甘かったり、それってすごく面白い。
山縣 そもそも、それを狙っているわけではないのですね。
石内 私の写真はどっか一点ピントが合っていればいいと思っているから。全てピントが合ったら物ですよ。私は物を撮っている気はしない。
山縣 空気ですか?
石内 そうです。その時の私との関係性を撮っています。
写真は最後の部屋となる「遺されたもの」。《ひろしま》やフリーダ・カーロの遺品を撮影した《Frida Love and Pain》も展示されている。