ART
NYスタッテン島にオレンジ色の人影現る!
『カーサ ブルータス』2018年1月号より
December 20, 2017 | Art, Design, Travel | a wall newspaper | text_Mika Yoshida
路上にいきなり出現した、鮮やかなメッシュの人々? 実はこれ、日本人作家による公共アートなんです。
マンハッタンの南端バッテリーパークから無料フェリーで25分。自由の女神を間近に見上げて向かうスタッテン島に、オレンジ色の《I am Here》がある。
作者は、日本人アーティストのHarumi Oriさん。NY交通局が開催したアートコンペで選ばれたコミッション作品だ。世界で最高価格の美術品が落札されるアート都市NYは、裾野も広い。公共アートが街の景観を美しくするのはもちろん、犯罪の抑止や地域住民の自尊心向上にもつながるのを、行政も市民も熟知している。アートの力を知るNY交通局が選んだ、目に楽しく社会をよりよくする作品が、《I am Here》。同じNYといっても郊外の、トンプキンスビルという駅近くの駐車場前、つまり“何もない”殺風景な場所がコンペの設置条件だった。
「15年前のミートパッキング地区を思い出させる、うら寂れた場所なんです」と語るHarumiさんはNY在住18年目。
「制作中は“何やってんの?”と通行人がやたらと話しかけてきたんです。“アートなんですよ”と言うと、アートとは無縁そうな彼らが“フン、アートね”ってわかったように言うのがおかしくて」
作者は、日本人アーティストのHarumi Oriさん。NY交通局が開催したアートコンペで選ばれたコミッション作品だ。世界で最高価格の美術品が落札されるアート都市NYは、裾野も広い。公共アートが街の景観を美しくするのはもちろん、犯罪の抑止や地域住民の自尊心向上にもつながるのを、行政も市民も熟知している。アートの力を知るNY交通局が選んだ、目に楽しく社会をよりよくする作品が、《I am Here》。同じNYといっても郊外の、トンプキンスビルという駅近くの駐車場前、つまり“何もない”殺風景な場所がコンペの設置条件だった。
「15年前のミートパッキング地区を思い出させる、うら寂れた場所なんです」と語るHarumiさんはNY在住18年目。
「制作中は“何やってんの?”と通行人がやたらと話しかけてきたんです。“アートなんですよ”と言うと、アートとは無縁そうな彼らが“フン、アートね”ってわかったように言うのがおかしくて」
《I am Here》は、彼女が詩人まど・みちおの詩『ぼくがここに』に影響を受けて長年作り続けているシリーズだ。同じ場所で同じ時間に人混みの写真を撮り、立体作品にして見せている。
「この人影は実際にここを歩いていた人たちを撮った写真から起こしたもの。あなたが今ここにいるのがいかにかけがえのないことかを表しているんですよ、と通行人に説明すると、みんな意外なほど素直に聞いて理解してくれます」
とてもアメリカらしいし、ある意味健康的、とも語る。
素材のビニールメッシュは視認性が高い「セーフティーオレンジ」色。もともと工事現場の囲いや雪よけに使われる、米国では日頃から見慣れたアイテムだ。米国の公共アートに常に伴う、誰かに壊される危険もこの頑丈な工業用メッシュなら心配ない。何より、軽やかに透けて、一瞬の移ろいを表すかのように美しい。展示は2018年9月27日まで。NYを訪れる際、ぜひ足を延ばしてみたい。
「この人影は実際にここを歩いていた人たちを撮った写真から起こしたもの。あなたが今ここにいるのがいかにかけがえのないことかを表しているんですよ、と通行人に説明すると、みんな意外なほど素直に聞いて理解してくれます」
とてもアメリカらしいし、ある意味健康的、とも語る。
素材のビニールメッシュは視認性が高い「セーフティーオレンジ」色。もともと工事現場の囲いや雪よけに使われる、米国では日頃から見慣れたアイテムだ。米国の公共アートに常に伴う、誰かに壊される危険もこの頑丈な工業用メッシュなら心配ない。何より、軽やかに透けて、一瞬の移ろいを表すかのように美しい。展示は2018年9月27日まで。NYを訪れる際、ぜひ足を延ばしてみたい。
織晴美
おりはるみ 東京出身。女子美術大学卒業後、グラフィックデザイナーを経て渡米、美大SVAで学ぶ。クイーンズ美術館やギャラリーFABほかで個展を開催。