「さいはて」だけれど本当は「最先端」。奥能登で時空を旅する芸術祭へ。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

「さいはて」だけれど本当は「最先端」。奥能登で時空を旅する芸術祭へ。

「さいはての地」とうたっているけれど、かつては大陸から最新のものが入ってくる「最先端の地」だった奥能登。『奥能登国際芸術祭 2017』は三方を海に囲まれた能登半島の先端で、海や山、廃線になった駅、空き家を舞台にバリエーション豊かな顔ぶれが登場する芸術祭です。さいはてから日本のルーツを辿るアートの旅に出かけませんか?

鴻池朋子《陸にあがる(崖)》。海に向かう崖に設置された作品は大きな角と人間とが組み合わされたもの。海と山、人と動物のはざまを見せる。
鴻池朋子《陸にあがる(崖)》
鴻池朋子《陸にあがる(海)》 photo_Nohagi Naka
「通常の向きで地図を見ると奥能登は日本列島からちょっと突き出た、端っこのエリアに見えるかもしれません。でも日本列島が上、中国大陸が下になるように地図の角度を変えると、能登半島は日本海にくさびを打ち込むような、重要な位置を占めていることがわかります」
『奥能登国際芸術祭 2017 公式ガイドブック』(現代企画室)の表紙には、上に日本列島、下に中国大陸が配置された東アジア諸国図(通称:逆さ地図)がイメージとして採用されている。
そう語るのは、この芸術祭の公式写真家であり、出展者の一人でもある石川直樹。海運が盛んだった時代、能登半島は北海道や東北から海産物や米を積んで都に向かう北前船が行き交い、中国や朝鮮半島から進んだ文化や技術が移入する海の玄関口だった。今でこそ辺境の地のように思われているけれど、本来ならこちらのほうが「入口」であり、太平洋側のほうがよほど田舎だったのだ。石川県珠洲市で開催中の『奥能登国際芸術祭 2017』はアーティストがそんな歴史を読みとり、形にしたアートが並ぶ。
塩田千春《時を運ぶ船》。製塩のため、実際に使われていた砂取船の周りを赤い糸で編み込む。会場は使われなくなった保育園。子供たちの記憶も重なる。
『奥能登国際芸術祭 2017』の見どころのひとつは、海を巡るさまざまな作品だ。塩田千春のインスタレーションはこの地で行われていた「揚げ浜式」という独特の製塩法にまつわるもの。実際にこの製塩法のために使われた「砂取船」という小舟に砂を積み、保育園だった建物の壁と舟とをつなぐように赤い糸を張り巡らせた。塩田は以前は黒い糸を使うことが多かったが、近年では赤い糸を使うようになった。黒はドローイングの黒い線のイメージなのだそうだ。血の色を思わせる赤は内面を象徴するのだという。体の中に入ったようにも感じられる、内省的な作品だ。

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