水のアートが気持ちいい! 『北アルプス国際芸術祭』スタートです。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

水のアートが気持ちいい! 『北アルプス国際芸術祭』スタートです。

今年も夏の芸術祭シーズンがやってきた! ひと足先に始まった『北アルプス国際芸術祭』はスケールの大きな山と水、アートとがたわむれる、格別に気持ちのいいアート・フェスティバル。さわやかな空と空気、ほとばしる水、夜の静かな闇とでリフレッシュできます。

目《信濃大町実景舎》。鷹狩山の山頂にある住宅がクリエイティブチーム「目」のアートに。「景色が物体的に見えた」(目)ことから生まれた。「山が遠い距離にあるはずなのに、目前に迫ってくるようにも感じられる」作品。 photo_Tsuyoshi Hongo
目《信濃大町実景舎》。内部では空間が複雑に絡み合う。座ったり、寝転んだりしてゆっくりと過ごしたい。 photo_Tatsumi Kazuki
ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット《ベールの向こうに》。空き家や空き店舗に透き通った白いベールをかぶせた。風に揺れるベールの向こうに、今では草や花の住処になった建物が見える。 photo_Tsuyoshi Hongo
目《信濃大町実景舎》。鷹狩山の山頂にある住宅がクリエイティブチーム「目」のアートに。「景色が物体的に見えた」(目)ことから生まれた。「山が遠い距離にあるはずなのに、目前に迫ってくるようにも感じられる」作品。 photo_Tsuyoshi Hongo
目《信濃大町実景舎》。内部では空間が複雑に絡み合う。座ったり、寝転んだりしてゆっくりと過ごしたい。 photo_Tatsumi Kazuki
ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット《ベールの向こうに》。空き家や空き店舗に透き通った白いベールをかぶせた。風に揺れるベールの向こうに、今では草や花の住処になった建物が見える。 photo_Tsuyoshi Hongo
『北アルプス国際芸術祭』が開かれているのは長野県大町市内の各所。白馬岳、槍ヶ岳など、山頂には初夏でも雪が残る北アルプスの山々の麓に広がるエリアだ。3年前に開かれた『信濃大町 食とアートの廻廊』(2014年)から関わっている総合ディレクターの北川フラムは「このエリアに流れる、豊かな水の奔流に圧倒されました」という。北アルプスからの雪解け水があちこちに湧き出し、澄んだ冷たい流れとなってほとばしる。田畑の近くには用水が勢いよく流れ、冷たい水を温める温水路も。さらに、ここはフォッサマグナ(糸魚川構造線)によって地質的には東と西が出合う場所でもある。市内には水源の違う2つの水が隣り合って湧き出る水汲み場があり、家の下をとうとうと流れる水路の水は、大正年間までそのまま飲用されていた。
遠藤利克《Triebー雨為る森ー》。ひとすじの水が滝のように流れ落ちる“シャワー”が森の中に何本も現れる。あり得ない光景が森と水の様相を強く意識させる。 photo_Tsuyoshi Hongo
山に、湖に、街に現れるアートにも水がふんだんに使われている。遠藤利克は森の中に、滝のように流れる水流を出現させた。足下には小さな通路が作られて、森と水の間を散策できる。流れ落ちる水はかなりの量。水音を聞きながら歩いていく、その体験はここでなくてはできないものだ。
五十嵐靖晃《雲結い》(くもゆい)。垂直に伸びる藍染めの組紐が湖と空をつなぐ。この世とあの世を結ぶようにも見える。 photo_Tsuyoshi Hongo
五十嵐靖晃は、木崎湖にある小さな桟橋の先に藍染めの糸で作った組紐を立てた。組紐といっても、糸自体が320本結いあわせた太いものだ。彼は『瀬戸内国際芸術祭2016』にも参加しており、そこでは猟師の網をモチーフにした作品を波打ち際に沿って水平に伸ばすというインスタレーションを展示していた。

「瀬戸内ではあの世は水平線の向こうにあるように感じられましたが、ここ信濃では空を見上げると、そこがあの世であるように思われる。山に囲まれたこの地には山岳信仰もあって、垂直方向に異世界がある、空から世界につながるような気がします」(五十嵐)

五十嵐の作品は地域の人と協働で作られている。信濃ではかつて養蚕業が盛んだったが、今では廃れてしまった。工房にしていた公民館には以前使っていた糸巻き機を持ってきてくれる人もいたという。

「糸を介してつながりができる。糸の文化を再起動できたのではないかと思います」と五十嵐はいう。