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陶芸家アダム・シルヴァーマンと〈いけばな草月流〉のコラボプロジェクト。

April 3, 2022 | Art | casabrutus.com | photo & text_Aya Muto

陶芸家のアダム・シルヴァーマンが2年越しで実現させたプロジェクト「Common Ground」が、アメリカ・ロサンゼルスでお披露目。〈いけばな草月流〉ロサンゼルス支部とのコラボレーション展示をレポートします。

集められた色鮮やかなアメリカ合衆国各地の土。©︎Common Ground

アメリカ、ロサンゼルスをベースに活動する陶芸家、アダム・シルヴァーマンが2年間かけてリサーチ、収集、制作を行ってきたというプロジェクト「Common Ground（コモン・グラウンド）」。共通点、という意味も込められたこのプロジェクトの新たな試みとして、〈いけばな草月流〉ロサンゼルス支部とのコラボレーション展示が行われた。

時は2019年の晩秋。年々政治的な対峙が激しくなるアメリカにおいて、一人の表現者としてアダム・シルヴァーマンは何かをしなくてはならない、という気持ちと葛藤していたという。

「そんな時、とある人との会話の中で、アメリカ全域の土を素材にした制作を考えたことがあるか、と問われたんです」

シンプルだけれど象徴的な意味も掲げることのできる大題に取り憑かれたアダムは、アメリカ合衆国をなす50の州とワシントンD.C.（特別区）、それにテリトリー5つ（プエルトリコ、グアムなどの自治領）を合わせた56の土地から、器を作る粘土、木灰、水を集めて制作するプロジェクト「Common Ground」を創案した。

州とテリトリーの数に合わせた56点の器は、米国全土から採集した粘土、木灰、水を独自に融合した釉薬で仕上げられた。©︎Common Ground

左から、草月流LA支部長であり、建築家のラヴィ・グンワーデナとアダム・シルヴァーマン。

様々な機関とのコラボレーションを目的とした器は「受ける」ために口が開き、「聞く」ために耳のような取っ手を持つ。

自身の暮らすカリフォルニアや、夏の家とスタジオがあるロードアイランドのように、個人的な思いと繋がりのある州は容易に素材が揃ったという。しかしアダムにとってこの規模でアメリカ全土に目を向けたのは初の試み。ちょうどパンデミックで閉鎖されていく日常の一方で、素材収集の交信網は広がっていった。

「友人の友人、という近いところから、各地の土砂採掘会社への問い合わせや、インスタグラムでの公募で集まった素材まで。隔離を要されていた日々でしたが、本当に沢山の人との交流を可能にしてくれたプロセスでした」

試行錯誤の結果、全部の土をブレンドした独自の釉薬を作り、木灰は窯の中に吹き付けてアクセントとすることに。仕上がった56点の器を使った最初のショーケースに、アダムはまず、〈いけばな草月流〉ロサンゼルス支部の作家たちを招いた。草月流は歴史的にもジョン・ラウシェンバーグやジョン・ケージなどの現代美術家や表現者たちとのコラボレーションを行ってきたことでも知られる流派だ。56の州とテリトリーそれぞれをテーマに作られた生け花たちとの対話が、アメリカ地図に則って配置された会場に色と華を添えている。

ラヴィの先生でもある武市治子作の《アラスカ》。器の木灰による照りも引き立つ。

《北マリアナ諸島》Auralynn Nguyen 作。

出身地のスリランカの熱帯風景をチャネリングし、《アメリカ領サモア》をテーマに生けるラヴィ。

段ボールを使ったインスタレーションは床の間のような演出に。

今回花器として使われたこの56点の器の他に、アダムは56の皿、ボウル、カップからなる食器セットをも作った。

「器を囲んで多彩なテーマの食事をその土地の食材で企画し、多分野の客人をテーブルに招く。この企画は食の運動家スコット・アルヴス・バートンと一緒にキュレーションしていきます」

アメリカという巨大な国の隅々から集められた素材を使うことで、多様なバックグラウンドを持つ人々が共通性に気づく。そのきっかけとなる「Common Ground」がどんな軌跡を残していくか、楽しみだ。