水平・垂直の線に隠されたモンドリアンの哲学|青野尚子の今週末見るべきアート | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

水平・垂直の線に隠されたモンドリアンの哲学|青野尚子の今週末見るべきアート

きっちりとした水平・垂直のラインと赤・青・黄の三原色で構成された画面。彼の抽象画は周辺の人々が手がける建築やデザインにも影響を与えていました。日本では23年ぶりになる回顧展で、その関係性を探ります。

壁面はモンドリアン「コンポジション」シリーズ、手前はヘリット・トーマス・リートフェルト《アームチェア》。豊田市美術館蔵。
今回のモンドリアンの回顧展には「純粋な絵画をもとめて」というサブタイトルがついている。初期には具象画を描いていた彼がどのようにして「コンポジション」と呼ばれる後期の抽象画にたどりついたのか、また彼が考えていた「純粋な絵画」とはどんなものかを探る展覧会だ。
モンドリアン《農家》(1895年)。初期作品だが、当時からリズムある画面構成がされているのがわかる。デン・ハーグ美術館蔵。
モンドリアン《砂丘I》(1909年)。補色関係にある黄色と薄い紫の線で砂丘が表現されている。デン・ハーグ美術館蔵。
モンドリアン《砂丘III》(1909年)。印象派を思わせる点描技法が使われているが、印象派の点描とは違い、小さな色面を敷き詰めたように見える。デン・ハーグ美術館蔵。
モンドリアン《砂丘》(1909年)。地である厚紙の茶色を活かして砂丘を表現している。石橋財団アーティゾン美術館蔵。
ピート・モンドリアンは1872年にオランダで生まれた。アムステルダムで絵画を学び、アカデミー修了後、同地でグループ展を開く。その展覧会に参加していたセザンヌやピカソの作品を見て、当時の芸術の中心であったパリへ行かなくては、との思いにかられ、1912年からパリにアトリエを構える。オランダでは伝統的な風景画などを描いていたモンドリアンだが、キュビスムに影響を受け、縦と横のラインで構成された絵を描くようになる。ただしモンドリアンの絵はキュビスムの単なる模倣ではなく、あくまでも彼オリジナルのものだった。
モンドリアン《ドンブルグの教会塔》(1911年)。同じ教会を点描で描いた別の作品も展示されている。デン・ハーグ美術館蔵。
モンドリアン《コンポジション 木々 2》(1912~13年)。パリで触れたキュビスムの影響が大きい1枚。木の幹や枝がキュビスムの形式で描かれる。デン・ハーグ美術館蔵。
その背景にはモンドリアンが20代後半から関心を持っていた神智学がある。仏教やギリシャ哲学などを参照した神智学では、人間は物質的な肉体と魂、霊の複合体であるといった独特の思想体系を構築していた。モンドリアンは1909年に神智学協会に入会する。

1914年に友人に出した手紙で彼は「古代の建築こそもっともすぐれた芸術だ。水平・垂直によって調和とリズムを生んでいる」といった意味のことを書いている。またモンドリアンが傾倒した神智学研究者・スフーンマーケルスは「原始的なものから高次なものへの進化を垂直運動、原因と結果を水平運動とし、この二つの交差が宇宙の根源である」として十字形に特別な意味を与えていた。

AIがあなたにおすすめ

※過去の記事も表示されます