ART
「電柱・電線」の美を愛でる絵画を見に行きませんか?
February 1, 2021 | Art, Architecture, Design | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
「富士には電信柱もよく似合ふ。」というどこかで聞いたようなキャッチコピーがついた展覧会『電線絵画展-小林清親から山口晃まで-』が2月28日から、東京の〈練馬区立美術館〉で始まります。近現代の画家は電信柱や電線をどう描いたのかを探る、奥の深い企画です!
いろんな「美」の中でも景観の美はとくに振れ幅が大きい。東京・日本橋の上をまたぐ首都高の高架道路は「目障りだ」という人から、土木の美を愛でる人まで百家争鳴だ。電柱・電線も一般には醜いとされる嫌われ者。地中化の議論も盛んに行われている。でもその電柱・電線に独特の美を見出した画家もいる。目障りだからと言ってなくしてしまっていいものか、との声もある。この展覧会は明治初期から現代まで電柱・電線を描いた絵を集めたもの。類似の企画が少ない、貴重な展覧会だ。
出品作の中で日本初の「電線絵画」と目されるのが明治維新直前の1854年(嘉永7年)の絵だ。ペリーがもたらした電信機の実験をしているところを、警備をしていた松代藩の藩士がスケッチした。当時、他国に上陸すると、まずやることが電信網の整備だった。国どうしの交渉や戦争は情報戦であり、情報を制するものが勝者となる。
時代が下って日本が他国を占領した際も同じことが行われる。福田豊四郎《スンゲパタニに於ける軍通信隊の活躍》は第二次世界大戦中、日本軍がマレーシアで電信柱を立てるところを描いたもの。長く延びる道に沿って電柱を立てていく。
時代が下って日本が他国を占領した際も同じことが行われる。福田豊四郎《スンゲパタニに於ける軍通信隊の活躍》は第二次世界大戦中、日本軍がマレーシアで電信柱を立てるところを描いたもの。長く延びる道に沿って電柱を立てていく。
明治期に活躍した”最後の浮世絵師”小林清親は明治維新以降、急速に近代化が進む都市の様相をノスタルジックな色調で描いた「光線画」で人気を博した。その中には電柱と電線が描き込まれたものもある。電柱・電線は橋や蒸気機関車と並んで、輝かしい近代を象徴するアイテムなのだ。浮世絵師は新しもの好きだからそんなものにはすぐに飛びつく。
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