ART
近世、近代日本画の歴史を一気にたどる『円山応挙から近代京都画壇へ』。
July 23, 2019 | Art | casabrutus.com | text_Mariko Uramoto
写生画で近世の日本絵画界に新風を吹き込み、円山派を確立した円山応挙。応挙によって花開いた写生画に柔和な情趣を加えて四条派を形成した呉春。この二人を起点に、江戸中期から昭和初期までの円山・四条派の名画が勢揃いする『円山応挙から近代京都画壇へ』が東京と京都で開催されます。
目の前のものをその通りに描く写生画。現在ではポピュラーな絵画のジャンルだが、この画風を確立したのが円山応挙だ。自然や花鳥、動物の生き生きとした姿を描くその手法は、狩野派をはじめとするそれまでの日本絵画には見られなかったもので、多くの人々を魅了した。応挙の写実主義に影響された大勢の画家たちが彼のもとに集まり、円山派を形成した。一方、与謝蕪村に学んだ呉春は応挙の画風に情緒をプラスした画風を育み、四条派を確立。以後、円山・四条派は、長沢芦雪、竹内栖鳳、上村松園といった時代を牽引する絵師たちを輩出。日本美術史の中で重要な立ち位置を占めている。今展は、そういった円山・四条派の作品約120件(東京展・京都展をあわせて)を「自然、人物、動物」とテーマごとに紹介する。モチーフは同じでも、作品が生まれた時代や手がけた作家によって、写実表現の違いを見比べることもできる。
注目は、応挙最晩年の最高傑作として知られる《大乗寺襖絵》の特別展示。兵庫県にある大乗寺(通称・応挙寺)のために描かれた《松に孔雀図》、《郭子儀図》(京都展のみ)といった障壁画を、実際の客室に設置されているように十字型に配置して再現展示する。絵画を立体的に鑑賞できるよう知恵を絞った応挙の空間プロデュース力も垣間見える作品だ。
鳳凰や龍など架空の動物ではなく、孔雀や虎、犬など生きた動物たちをじっくりと観察し、細部に至るまで正確に描こうとした応挙。その姿勢は弟子たちにも受け継がれ、猿を頻繁に描いた森派、虎を得意とする岸派が生まれた。いずれの作品も生命感に溢れ、躍動的な姿を描くという共通点を持っており、その特徴はそのまま京都画壇の重要な特性として近代にも受け継がれている。
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