ART
編集者の知恵が詰まった岡本仁の猪熊弦一郎展。
『カーサ ブルータス』2019年7月号より
June 16, 2019 | Art, Travel | a wall newspaper | text_Neo Iida
四国村ギャラリーで猪熊弦一郎展の監修を務めた岡本仁。セオリーを無視した編集者ならではの展示方法とは?
瀬戸内国際芸術祭2019で、新たに公式アート作品の展示会場となった高松市の四国村。その村内にある四国村ギャラリーで開催中の『猪熊弦一郎展「私の好きなもの」』は、猪熊弦一郎をこよなく愛する編集者、岡本仁が監修を手がけている。
「〈MIMOCA〉(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)が改装で来年3月まで閉館すると知って、瀬戸芸で猪熊さんの作品が見られないなんて! と愕然としていたんです。そうしたら四国村で猪熊さんの作品を展示したいんですが……と〈MIMOCA〉から話が来て」
「〈MIMOCA〉(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)が改装で来年3月まで閉館すると知って、瀬戸芸で猪熊さんの作品が見られないなんて! と愕然としていたんです。そうしたら四国村で猪熊さんの作品を展示したいんですが……と〈MIMOCA〉から話が来て」
安藤忠雄建築の四国村ギャラリーは、所蔵品を中心に展示するコンパクトな会場だ。
「僕は猪熊さんのことは好きですが、展示は全くの素人。備え付けの什器とか、細長い展示室とか、もとの構造をどう使うか考えました。でも編集と一緒で、制約があるほどアイデアが出るんですよ」
「僕は猪熊さんのことは好きですが、展示は全くの素人。備え付けの什器とか、細長い展示室とか、もとの構造をどう使うか考えました。でも編集と一緒で、制約があるほどアイデアが出るんですよ」
展示の監修は初めてだったが、始めると雑誌づくりと変わらないことに気づいた。まずは特集タイトルだと、岡本さんはこの個展を「私の好きなもの」と名づけた。
「ここにあるのは猪熊さんが好きなものでもあるし、僕が好きなものでもある。その視点で作品を選びました。会場に来た人の好きなものになってくれたらなあと」
「ここにあるのは猪熊さんが好きなものでもあるし、僕が好きなものでもある。その視点で作品を選びました。会場に来た人の好きなものになってくれたらなあと」
展示の意図を正しく伝えるため、岡本さんはエッセイを書き、会場に掲示した。なかには「猪熊さんはスター・ウォーズが好きだった」というものも。見せたいのは作品を通じた、猪熊さんという人物の人となりでもあるのだ。
「猪熊さんって面白い人だったよねと思ってほしくて。アートだから難しく見なくちゃいけないことはないし、誰に怒られても自分が好きだったらいいじゃないかって。そんな提案でもあるんですよ」
「猪熊さんって面白い人だったよねと思ってほしくて。アートだから難しく見なくちゃいけないことはないし、誰に怒られても自分が好きだったらいいじゃないかって。そんな提案でもあるんですよ」
猪熊弦一郎展「私の好きなもの」
〈MIMOCA〉の所蔵作品から絵画作品25点、立体作品と愛蔵品50点を展示。香川県高松市屋島中町91 四国村内 四国村ギャラリー TEL 087 843 3111。9時〜17時(入館受付は16時30分まで)。会期は2期制。Part1 〜7月13日、Part2 7月19日〜9月8日。※7月20日は9時〜16時(入館は15時30分まで)大人1,000円・高校生600円・小中学生400円。
岡本仁
おかもとひとし 北海道生まれ。マガジンハウスで『ブルータス』『リラックス』『クウネル』などの編集に携わり、ランドスケーププロダクツに入社。最新刊『また旅。』(京阪神エルマガジン社)発売中。