ビルに心を奪われた大竹伸朗の40年。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ビルに心を奪われた大竹伸朗の40年。

展示点数は圧巻の500点以上。現代美術家の大竹伸朗が1970年代から現在まで制作し続ける「ビル景」シリーズに焦点をあてた展覧会が〈熊本市現代美術館〉で行われている。

大竹伸朗『白壁のビル2』2017年
©︎Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo, Photo by Kei Okano
鉛筆で走り書きしたビル、油絵の具を地層のように重ねて描いたビル、コラージュによって窓の風景を表したビルなど。これまで大竹伸朗はさまざまな手法を使って、膨大な数のビルを生み出してきた。今展に先駆けて発刊された『大竹伸朗ビル景 1978-2019』画集は、作家自身が3年余りをかけて「ビルのある風景」、およびそれに付随する作品を集め、時系列で紹介。初期の作品から未公開作品、最新作まで800点以上を収録している。本展はそこから可能な限りの作品を展示することで、『ビル景』シリーズの全てを明らかにしようとする。

大竹がビルを意識したのは1979年。初めて訪れた香港で、何気なく目に入ったビルが自分の心情と同期したように感じ、「香港の空気や湿気、熱波、騒音、匂い、進行形で自分が浴びているものすべてを閉じ込めよう」と、一気に鉛筆で描いた。その絵を見た時、内と外が合体したような感覚を覚えたという。以来、大竹は現在に至るまで40年に渡って「ビル景」を描き続けている。制作の発火点になったのは香港だが、これまで手がけてきた「ビル景」はいずれも現実の風景をそのまま描いたものではない。ロンドン、東京、ニューヨークなどさまざまな都市を歩きながら、数十年かけて蓄積した自分の記憶の断片をミックスして、ビルという形で表現した仮想の風景だ。
大竹伸朗『放棄地帯』2019年
©︎Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo, Photo by Kei Okano
大竹は「見えない音、聴こえない絵」『新潮』2019年4月号の中で「続けようとすることよりも続いていってしまう事柄の中に探しものはいつも隠れている」と話している。40年という長い年月の中で生まれた膨大な作品群を見ていると、制作当時の環境や心情の変化が垣間見えると同時に、ひとりの画家の衝動と作為のない制作意欲が伝わってくるようだ。

『大竹伸朗 ビル景 1978−2019』

〈熊本市現代美術館〉熊本県熊本市中央区上通町2-3。〜6月16日。10時〜20時(入場は19時30分まで)。火曜休。TEL 096 278 7500。1000円。