ARCHITECTURE
山下めぐみのロンドン通信|ヘルシンキの新美術館 〈アモス・レックス〉へ。オープニングはチームラボ。
| Architecture, Art, Travel | casabrutus.com | text_ Megumi Yamashita
今回はロンドンから飛行機で約3時間。フィンランドの首都ヘルシンキへ。アアルト、マリメッコ、ムーミン、イッタラなど建築とデザインの宝庫だ。そのど真ん中にオープンした美術館 〈アモス・レックス〉と、今後のヘルシンキについてレポートしたい。
東京での最初のオリンピックは、実は1940年に予定されていた。 日中戦争の勃発で代わりの開催地に選ばれたのがヘルシンキだった。とはいえ、こちらも世界大戦の激化で、実際のオリンピック開催は1952年まで延期になった。そんなわけで、ヘルシンキには30年代から50年代にかけ、段階的に建てられたオリンピック関係の施設が点在する。その一つがメイン通りの交差点にある〈ラシパラツィ〉という1930年代に建てられた建物だ。映画館を始め、レストランなどが入居しているが、老朽化により一時は取り壊しも検討されていた。
そんな物件に着目したのが〈アモス・アンダーソン美術館〉。新聞社を経営し国会議員も務めたアモス・アンダーソンが収集したアートコレクションを、彼の死後公開するために創設された美術館だ。自邸とオフィスのある建物を美術館として公開してきたが、もっと大きなスペースへの移転を計画していた。
そんな物件に着目したのが〈アモス・アンダーソン美術館〉。新聞社を経営し国会議員も務めたアモス・アンダーソンが収集したアートコレクションを、彼の死後公開するために創設された美術館だ。自邸とオフィスのある建物を美術館として公開してきたが、もっと大きなスペースへの移転を計画していた。
この建物は文化財としても重要物件ゆえ、ラディカルな改築や増築は難しい。 そこで地元の建築ユニットJKMMが考えた案は、既存の建物はオリジナルに忠実に修復する一方、新しいギャラリーを建物の裏側に隣接する公共広場の地下に増築するというものだった。
柱ない大空間を実現させ、また広場に貫通する天窓を設けるため、地下の増築部は 天窓のあるドーム屋根構造を採用。「泡がぶくぶく下から上がってきたかのように」と、広場に大小5つ小山がせり出したようなデザインだ。それぞれに丸い天窓が切り抜かれている。アルヴァ・アアルトの建築にも見られるように、緯度の高いフィンランドでは自然光を最大に取り入れるべく、天窓のある建物は多い。その伝統を現代的に解釈し、彫刻性や公共性、構造や機能が巧妙に合体されている。
日本なら「危ない」などと柵が設けられそうだが、「自由によじ登ったり、スケートボードをしたりして、 市民に愛される広場、そして美術館になってほしいです」と言う館長のカイ・カルティオ。そのおおらかさも、この街の心地よさを象徴するように感じる。ちなみに美術館は公営ではなく、建設費の5,000万ユーロ(約64億円)は、私設のアート基金から捻出されている。
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