ARCHITECTURE
ピーター・ズントーがブレゲンツ美術館でパーソナルな展覧会を開催中。
December 7, 2017 | Architecture | casabrutus.com | text_Megumi Yamashita
ピーター・ズントーのブレイク作となった名建築、ブレゲンツ美術館が創立20周年。それを祝して、ズントー自身が好きなものをみんなと分かち合う、という展覧会が開催中だ。
オーストリアのブレゲンツは、ボーデン湖を挟んでスイスとドイツに接する閑静な街。1997年にピーター・ズントー設計の〈ブレゲンツ美術館〉がオープンして以来、建築巡礼の名所としても知られるところになった。過去にもここでズントーの回顧展を開催しているが、今年は開館20周年で、再びズントーの展覧会が開催されている。ズントー建築はいつでも驚きに満ちているが、今回の展覧会も想定外な内容。期待を超えるものになっている。
展覧会タイトルは「Dear to Me」。これまでズントー作品を隈なく追って来た『カーサ ブルータス』だが、今回も本人に話を聞いた。
「Dear to Me、つまり私にとって大切であることを皆とわかち合い、共に祝おうではないか、というものだ。文学、音楽、トーク、アートなど、展示のほかイベントを日替わりで主催するので、建築ともども楽しんでもらいたい」
すなわち、いわゆる建築展ではなく、ズントーの好きなものを展示する祝宴、といった企画だ。
展覧会タイトルは「Dear to Me」。これまでズントー作品を隈なく追って来た『カーサ ブルータス』だが、今回も本人に話を聞いた。
「Dear to Me、つまり私にとって大切であることを皆とわかち合い、共に祝おうではないか、というものだ。文学、音楽、トーク、アートなど、展示のほかイベントを日替わりで主催するので、建築ともども楽しんでもらいたい」
すなわち、いわゆる建築展ではなく、ズントーの好きなものを展示する祝宴、といった企画だ。
1階は、あたかも小さなコンサートホール。バーカウンターがあり、中央に一段高くなったステージが。それを音響用のパネルや特別にデザインされたイスや小さなサイドテーブルが囲む。ミュージックディレクションは、長男でパーカッショニストのピーター・コンラディン・ズントーが務め、連日、コンサートやトークがここで行われる。毎週日曜日にはズントー自身が登場し、彼が指名した人物との対話が行われる。中にはヴィム・ベンダースなども。
「特にテーマや内容は決めず、興味があることや思いついたことを尋ねながら対話を進めていく。あいにく、ほぼドイツ語になると思う」
毎週登場と言うのはかなりの気合いを感じる。そのほか、ズントーのインタビューや作品の映像も、上映されている。
「特にテーマや内容は決めず、興味があることや思いついたことを尋ねながら対話を進めていく。あいにく、ほぼドイツ語になると思う」
毎週登場と言うのはかなりの気合いを感じる。そのほか、ズントーのインタビューや作品の映像も、上映されている。
2階では、長年ズントー作品を撮影している 写真家のヘレン・ベネの作品の展示になる。ズントーが敬愛するギリシャのモダニズム建築家ディミトリス・ピキオニスによる、アテネのアクロポリス周辺の石畳を撮影したものだ。
「彼はモダニストであるが、重い石を使ったこの石畳は人の手のなせる技。そこに私は惹かれてきた。この写真がヘレンとの出会いのきっかけだった」
陰影を礼賛するモノクロ写真が、柔らかい光の中でコンクリートの壁に点在する。その中央では、16mあるというテープがループ状に天井から下がる。これはオルゴールのパンチカードで、真ん中にある小さなオルゴールをグルグル回すと音を奏でるようになっている。
「息子のキュレーションで、楽曲はオーストリアの現代作曲家オルガ・ノイヴィルスがこの展示用に作曲したものだ」
手で回し、耳で聞き、目で写真作品を眺め、そして空間を味わう。
「彼はモダニストであるが、重い石を使ったこの石畳は人の手のなせる技。そこに私は惹かれてきた。この写真がヘレンとの出会いのきっかけだった」
陰影を礼賛するモノクロ写真が、柔らかい光の中でコンクリートの壁に点在する。その中央では、16mあるというテープがループ状に天井から下がる。これはオルゴールのパンチカードで、真ん中にある小さなオルゴールをグルグル回すと音を奏でるようになっている。
「息子のキュレーションで、楽曲はオーストリアの現代作曲家オルガ・ノイヴィルスがこの展示用に作曲したものだ」
手で回し、耳で聞き、目で写真作品を眺め、そして空間を味わう。
3階はあたかも図書室だ。本棚が迷路のように弧を描いて設置されている。
「スイスの古本屋と交渉して40,000冊をここに運び込んだ。ランダムに並んでいるので、気になる本を手に取って好きに読んでもらえればいい」
手回しの蓄音機とレコードもあり、アナログな世界である。中央に椅子とこのためにデザインされたスタンド照明があり、座って読書にふけるもよし。本に囲まれ、内面に対峙するための瞑想的な空間といった感じもする。
「スイスの古本屋と交渉して40,000冊をここに運び込んだ。ランダムに並んでいるので、気になる本を手に取って好きに読んでもらえればいい」
手回しの蓄音機とレコードもあり、アナログな世界である。中央に椅子とこのためにデザインされたスタンド照明があり、座って読書にふけるもよし。本に囲まれ、内面に対峙するための瞑想的な空間といった感じもする。
いよいよ最上階の4階へ。
「ここはガーデンのイメージで、スイスの現代アーティスト、シュタイナー&レンツリンガーにインスタレーションをお願いした」
天井のガラスを透過したやわらかな自然光のもと、枝や種や貝殻や羽、生きた植物、プラスチックのボトルやオモチャ、ガラスなどなど、いろいろなものを使った立体的なコラージュが、モビールのように天井から下がり、自由自在に展開されている。壁から苔がむしているような凝った仕込みもあり、建築空間との絡み合いも見ものだ。床に点在する岩になど、禅の庭のような要素も。お茶を飲めるコーナーもあり、ここでも五感を全開して味わってほしい、という意図が感じられる。
「ここはガーデンのイメージで、スイスの現代アーティスト、シュタイナー&レンツリンガーにインスタレーションをお願いした」
天井のガラスを透過したやわらかな自然光のもと、枝や種や貝殻や羽、生きた植物、プラスチックのボトルやオモチャ、ガラスなどなど、いろいろなものを使った立体的なコラージュが、モビールのように天井から下がり、自由自在に展開されている。壁から苔がむしているような凝った仕込みもあり、建築空間との絡み合いも見ものだ。床に点在する岩になど、禅の庭のような要素も。お茶を飲めるコーナーもあり、ここでも五感を全開して味わってほしい、という意図が感じられる。
「マーラーやワグナーの旋律のように、人の心を揺さぶる空間を創ることが出来るなら、なんと素晴らしいことか」
ズントーは展覧会の案内にこう書いている。名建築と名高い美術館だが、今回、彼自身によるパーソナルなキューレーションによって、さらに深く、五感を通してズントー建築を味わうことができる、またとないぜいたくな機会になっている。
ズントーは展覧会の案内にこう書いている。名建築と名高い美術館だが、今回、彼自身によるパーソナルなキューレーションによって、さらに深く、五感を通してズントー建築を味わうことができる、またとないぜいたくな機会になっている。