ホンマさんと妹島さん、映画の話をしましょう。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ホンマさんと妹島さん、映画の話をしましょう。

『カーサ ブルータス』2020年11月号より

公開中の映画『建築と時間と妹島和世』。監督と被写体にじっくりお話しいただきます。

ホンマタカシ
写真家。東京都生まれ。後ろに写っているのは東京2020オリンピック公式アートポスターになった作品。最新刊に『Looking Through Le Corbusier Windows』など。
妹島和世
せじまかずよ 建築家。茨城県生まれ。本人名義、西沢立衛との〈SANAA〉名義の両方で活躍する。現在も〈新香川県立体育館〉をはじめとする世界各地のプロジェクトに大忙し。
2017年に大阪芸術大学に誕生したアートサイエンス学科。翌18年に完成した〈大阪芸術大学アートサイエンス学科新キャンパス〉は、妹島和世による国内初めての学校建築だ。小高い丘の一部のようにも見える、内部と外部が有機的につながっていく建築を覚えている人も多いはず。公開中の映画『建築と時間と妹島和世』は、基本計画段階から工事を経てこの建築が出来上がるまでの3年半を追った、60分のドキュメンタリー作品。監督・撮影は写真家としても長く活躍するホンマタカシ。映画公開に先立って、二人に話を聞いた。
台本は一切なし。妹島が何に逡巡し、何を考えるかがリアルに伝わってくる。
──映画の製作はどんな経緯で始まったのでしょうか?

ホンマタカシ(以下ホンマ) 元は大学からの依頼で始めた仕事なんです。建築学科のある大学だし、学生の教育の一助になるものとして、妹島さんが自分たちのキャンパスに建築をつくる過程を10分程度のムービーにしてほしい、と。

妹島和世(以下妹島) まずは計画段階の模型を見ながらコンセプトを話すのが最初でしたね。

ホンマ 仕事として映像を撮る場合、クライアントの注文がかなり細かく入ることが多いんです。ところが今回は僕の好きにさせてくださった。それでどんどん撮り始めて長くなりました(笑)。

妹島 といっても、半年置きくらいの撮影だし、撮影のときも、いつ撮られているか分からなかったので、長く感じなかったですね。

ホンマ 実はほとんど捨てカットがないんです。ドキュメンタリーは、何十時間もカメラを回すのが普通。でもそれって本当かな? と僕は思っていて。もちろん作品としてのリズムのためにカットの入れ替えなどはするけれど、無駄なシーンはほぼありませんでした。

妹島 ホンマさんは写真も驚くべき速さで撮られますもんね。
ロングショットで撮られた建築の美しさ。
撮影中に事務所が引っ越し。キャリアを振り返るシーンも。
──お二人が知り合ったのは?

妹島 1999年完成の〈小笠原資料館〉の撮影を依頼したのが直接の仕事としては初めてですね。

ホンマ その後〈小さな家〉を撮ったり、〈金沢21世紀美術館〉では敷地の段階から撮影したり。でも今回のように、一本のまとまった映像をつくるのは初めてです。

──ホンマさん、被写体としての妹島さんの印象は?

ホンマ ドキュメンタリーだし、妹島さんの言葉は台本なし。それで今回改めて実感したのですが、妹島さんは言葉がいいんですよ。多くの建築家が言うような分かりやすいキャッチフレーズを言わない。そこが僕はとても信頼できます。それから衣装! 作中の妹島さんは完全に私服ですが、衣装のかぶりもないし、どのコーディネートもとても素敵です。そういうところも見てほしいですね。

──では妹島さん、映画監督としてのホンマさんとは?

妹島 ホンマさんの、自分たちとは全く違う視点で建築を見る目をとても信頼しています。それは映像も同じ。映像で撮られること自体は初めてではないけれど、今回はとてもリラックスしていました。実際の映像もホンマさんらしく、とても美しいと思います。

ホンマ 恥ずかしくて聞いていられません(笑)。映画を撮るときはいつも、映画と写真の中間を撮りたいと思っています。そこを体験していただけたらうれしいです。
現場の定点観測も収録されて作品にいいリズムを与えている。
植物に水をあげている、なかなかレアなシーンも。

『建築と時間と妹島和世』

撮影・監督/ホンマタカシ、出演/妹島和世、製作/大阪芸術大学。ひとつの建物が出来上がっていくまでの経緯を追う。各界から注目を集めるジャズドラマー、石若駿による音楽も必聴。ユーロスペースほかにて全国順次公開。

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