直木賞作家が語る、辰野金吾の偉業とは。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

直木賞作家が語る、辰野金吾の偉業とは。

『カーサ ブルータス』2020年4月号より

建築をこよなく愛する作家・門井慶喜さんに、新作の主人公である辰野金吾の見るべき名作を聞きました。

1. ちぐはぐさが微笑ましい、日本初の大型建築【日本銀行本店】
砂場でお城を作る子どものような人間味が出ていて好きです。建設当時はガラス屋根から1階まで光が降り注いでいたそう。金吾は宗教建築の手法を使ったんじゃないでしょうか。せっかく立派なドームなのになぜか奥にあり、目立たないのも矛盾しています…。写真提供:日本銀行
2. 人生をかけた悲願の集大成【東京駅丸の内駅舎(中央停車場)】
日銀よりドームが目立つしデザインもまとまっている。努力したのがよくわかります。金吾は日本で最初の建築家であり、最後の様式建築家でもある。その様式建築 “滅びの第一楽章” である東京駅はそれ以上古くならないからこそ、逆に新しいままなんでしょうね。(c) Aflo
3. 珍しく素朴で、好感が持てる【浜寺公園駅 旧駅舎】
当時とても賑わったリゾート地の最寄り駅として建てられたのですが、金吾にとっては縁もゆかりもない地域の頼まれ仕事。その上それまでの重厚な大型建築と真逆のコンセプトです。だからなのか、構えすぎない普段着の金吾が表れていて一番好感が持てます。
4. 実は和風じゃない、辰野式和風建築【奈良ホテル】
数少ない和風建築と言われていますが、よく見るとかなり洋風。玄関でいきなり現れる大階段は『タイタニック』さながら。紳士淑女が一番綺麗に見える舞台装置の機能を応用したのだと思います。古都奈良の風景と西洋の要素が馴染んでいるのが金吾の凄いところ。
5. 弟子への挑戦心によって作られた?【武雄温泉新館 楼門】
最も金吾らしくない和風の建物。内部には十二支のうち4つの干支が(残りの8つは東京駅に描かれている)。金吾は弟子の伊東忠太に西洋志向を反発されていたので、俺でも和風建築ができるんだ! という挑戦心からこれを設計したんじゃないか、と予想してます。
1. ちぐはぐさが微笑ましい、日本初の大型建築【日本銀行本店】 砂場でお城を作る子どものような人間味が出ていて好きです。建設当時はガラス屋根から1階まで光が降り注いでいたそう。金吾は宗教建築の手法を使ったんじゃないでしょうか。せっかく立派なドームなのになぜか奥にあり、目立たないのも矛盾しています…。写真提供:日本銀行
2. 人生をかけた悲願の集大成【東京駅丸の内駅舎(中央停車場)】 日銀よりドームが目立つしデザインもまとまっている。努力したのがよくわかります。金吾は日本で最初の建築家であり、最後の様式建築家でもある。その様式建築 “滅びの第一楽章” である東京駅はそれ以上古くならないからこそ、逆に新しいままなんでしょうね。(c) Aflo
3. 珍しく素朴で、好感が持てる【浜寺公園駅 旧駅舎】 当時とても賑わったリゾート地の最寄り駅として建てられたのですが、金吾にとっては縁もゆかりもない地域の頼まれ仕事。その上それまでの重厚な大型建築と真逆のコンセプトです。だからなのか、構えすぎない普段着の金吾が表れていて一番好感が持てます。
4. 実は和風じゃない、辰野式和風建築【奈良ホテル】 数少ない和風建築と言われていますが、よく見るとかなり洋風。玄関でいきなり現れる大階段は『タイタニック』さながら。紳士淑女が一番綺麗に見える舞台装置の機能を応用したのだと思います。古都奈良の風景と西洋の要素が馴染んでいるのが金吾の凄いところ。
5. 弟子への挑戦心によって作られた?【武雄温泉新館 楼門】 最も金吾らしくない和風の建物。内部には十二支のうち4つの干支が(残りの8つは東京駅に描かれている)。金吾は弟子の伊東忠太に西洋志向を反発されていたので、俺でも和風建築ができるんだ! という挑戦心からこれを設計したんじゃないか、と予想してます。
2018年、『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞した門井慶喜さん。ヴォーリズを描いた『屋根をかける人』や、共著『ぼくらの近代建築デラックス!』など、建築が舞台の作品を数多く発表しています。そして最新刊『東京、はじまる』の主人公に選んだのは、近代建築の父・辰野金吾。そんな建築好きの門井さんに、辰野金吾の魅力について聞きました。

── なぜ辰野金吾を主人公に?

門井 何もないところから何かを作る、その苦悩にとても共感できるからです。小説で一番大変なのは下書きで、ゼロから作る作業が一番時間と頭を使います。金吾が作った日本初の大型建築である日銀本店がまさにそれで、金吾にとっても、国家にとっても初めてのことでした。細かいところを見ると、デザインは不格好なまでに力が入っていてぎこちない。そういうものを見るにつけ、当時の金吾の試行錯誤が感じられて、何もない中でこれを完成するのがどれだけすごいことかと職業柄共感してしまいます。

── 建築を巡るとき、どんな視点を持っていますか?

門井 建築はストーリーの問題で、僕はそのストーリーは見る人が作ればいいって思うんです。美術や小説に比べて建築ファンの人口が少ないのは、ストーリーがわかりづらいからじゃないでしょうか。例えばレンブラントの絵を見れば、この人死にそうだ、ってすぐわかるでしょう。けれど建築はまず知識がないとわからない。もちろんあればより楽しめるのですが、それよりも建築家の人生や時代背景から、実はこうだったのかなとストーリーを作るとおもしろいです。

── 東京が舞台の作品を多く書かれている理由は?

門井 建築はいい作品があってもそれだけで終わってしまいがちです。しかし東京の建築は近代史と直結しているので、肉付けできるストーリーが豊富で小説として書きやすいからです。

── 他の建築家にはない金吾の人としての魅力は?

門井 甘えなかったこと。 今の時代の “好きなことを仕事にする” という考えは、彼には理解できないんじゃないかな。とにかく社会のためにやっていたから。主席卒業、国費留学までして必死に努力して、それがわかりやすく作品に出ている。つい応援したくなるんですよね。

語ってくれた人:門井慶喜(かどいよしのぶ)

1971年生まれ。2003年『キッドナッパーズ』でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。18年『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞。近代建築を巡る〈ブラカドイ〉主宰。

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