巨匠の思いが純粋に形態化された、普段使いのクルマ。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

巨匠の思いが純粋に形態化された、普段使いのクルマ。

『カーサ ブルータス』2018年12月号より

とにかく空間が欲しかった。1980年に発表された《パンダ》の開発当初に、メーカーの〈フィアット〉が抱えていた条件である。

フィアット パンダ
設計からスタイリングまでを担当したのは、本連載で何度も名を挙げてきた天才デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロ。空間を確保するため、可能なかぎり平らなパネルを使ってデザインした。ウィンドシールドまで曲率を持たないガラスである。その結果、《フィアット126》に代わる80年代のベーシックカーとして、3・3Mの短い全長ながら5人乗りが実現した。

ジウジアーロが優れていたのは、軽量化とコスト削減のために部品点数を減らす一方で、それを逆手にとって斬新な提案としたことだ。

それが純粋な形で表現されているのがこの最初期型である。フロントグリルの代わりにスリットが開けられただけのパネル、薄いフロントシート、構造材をほぼ持たないハンモックのようなリアシートといった具合だ。

当時ジウジアーロは〈フィアット〉の会長として絶大な権力を(イタリア中に)持っていたジャンニ・アニェッリと頻繁に接触していた。車両の開発において〈フィアット〉社員と意見対立があると直訴して、自分の考えを説いたとか。《パンダ》も、なにがなんでもこのデザインを、というジウジアーロの強い思いの産物だろう。

日常使うものは美しくあってほしい、とイタリア人はよく言う。《パンダ》はその代表例だ。
フロント右側にスリットがあるのは652㏄2気筒の最初期型の《パンダ30》(グレード名は30馬力に由来)。
操作類はすべて一つのクラスターに集約してコストダウン。結果的に機能的で使いやすいデザインとなった。
フロントシートは外側のみフレームを持った簡便な構造だが乗り心地は良好。
前傾させたことで躍動感が生まれたテールゲート。
フロント右側にスリットがあるのは652㏄2気筒の最初期型の《パンダ30》(グレード名は30馬力に由来)。
操作類はすべて一つのクラスターに集約してコストダウン。結果的に機能的で使いやすいデザインとなった。
フロントシートは外側のみフレームを持った簡便な構造だが乗り心地は良好。
前傾させたことで躍動感が生まれたテールゲート。
country: Italy
year: 1980-2002
seats: 5
size: L3,380×W1,460×H1,445mm
price: approx 1,300,000 yen
special thanks to Tetsuya Ishihara, Pandarino Executive Committee ※データと価格は、撮影車両を参考に算出したものです。