VEHICLE
Chill CARS|クルマに託した夢を想起させてくれる、小さなスポーツカー。
『カーサ ブルータス』2020年12月号より
November 11, 2020 | Vehicle, Design | Chill CARS | photo_Futoshi Osako text_Izuru Endo illustration_Daijiro Ohara
自動車の歴史が始まって以来、人々はクルマにスピードを求めてきた。1960年代のイタリアでは、すでに最高時速が250km超という高級スポーツカーさえ現れている。
しかし、それらを手に入れることは一般的には困難だったため、排気量が1000㏄に満たない小型車を含め、世界中のメーカーによって安価なスポーツ仕様が用意され、若者を中心に高い人気を集めた。
そのひとつが、小型大衆車の《フィアット850》をベースに作られた《850スポルトクーペ》で、1968年に登場した。
広い室内を備え実用性を重視した標準の《850》と違い、《スポルトクーペ》は同時代の〈フェラーリ〉のモデルを縮小コピーしたようなスタイルに変更。スポーティなイメージを押し出していた。
〈フェラーリ〉よりも全長が1m近く短い小さなクルマだが、美しいカーブを描くルーフは、まさにスポーツカーのフォルム。さらに当時のスポーツカーで流行した、スパッと切り落としたようなテールデザインさえも持つ。量産大衆車をベースとしながらも、精いっぱいスポーツカーになろうとした、涙ぐましい努力の跡が微笑ましい。
クルマがまだ夢の乗り物だった時代、人々は遠く手が届かない高級モデルに想いを馳せ、コンパクトなスポーツカーに夢を託した。《850スポルトクーペ》は、現代では失われつつある “クルマに託した夢” を知るためのタイムマシンでもあるのだ。
そのひとつが、小型大衆車の《フィアット850》をベースに作られた《850スポルトクーペ》で、1968年に登場した。
広い室内を備え実用性を重視した標準の《850》と違い、《スポルトクーペ》は同時代の〈フェラーリ〉のモデルを縮小コピーしたようなスタイルに変更。スポーティなイメージを押し出していた。
〈フェラーリ〉よりも全長が1m近く短い小さなクルマだが、美しいカーブを描くルーフは、まさにスポーツカーのフォルム。さらに当時のスポーツカーで流行した、スパッと切り落としたようなテールデザインさえも持つ。量産大衆車をベースとしながらも、精いっぱいスポーツカーになろうとした、涙ぐましい努力の跡が微笑ましい。
クルマがまだ夢の乗り物だった時代、人々は遠く手が届かない高級モデルに想いを馳せ、コンパクトなスポーツカーに夢を託した。《850スポルトクーペ》は、現代では失われつつある “クルマに託した夢” を知るためのタイムマシンでもあるのだ。
country: Italy
year: 1968-1973
seats: 4
size: L3,650×W1,500×H1,300mm
price: approx 2,000,000 yen
special thanks to Hayato Nieda
※データと価格は撮影車両を参考に算出したものです。
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