DESIGN
アメリカ社会の今を描く作家ニック・ドルナソ。
『カーサ ブルータス』2018年9月号より
August 21, 2018 | Design | a wall newspaper | text_Mikado Koyanagi editor_Yuka Uchida
グラフィカルな線と色で描くセンシティブな人々。アメリカに限らない現代社会の闇が漫画に!
ニック・ドルナソは、もっとも注目すべきアメリカのグラフィックノベル作家だ。彼は、2016年に『ビヴァリー』でデビューしたが、そのフランス語版は、コミックの世界でもっとも権威あるとされるアングレーム国際漫画祭で新人賞に輝いている。
そのニック・ドルナソ本人に新作を語ってもらった。彼のコミックをパラパラとめくってまず印象に残るのが、描線やコマ割りに至るまで、その絵柄が徹底したミニマリズムに貫かれている点だ。だが、彼は制作に全くコンピュータを使わないのだそうだ。
「僕はいつも印刷物の約2倍の大きさの普通のブリストルボードに描いている。すべて自分の手でペンとインクを使ってね」
『ビヴァリー』も『サブリナ』も、彼と同じシカゴ郊外に暮らす、まるでトッド・ソロンズの映画に出てくるような、どこか心を病んでいる人々が描かれているが、ドルナソはこう言う。
「初め、彼らは僕がよく知っているアメリカ中西部に特有な人たちのつもりだったけど、今では、世界のどこにでもいる、ある特定のタイプの人たちのことだと思うよ」
そして『サブリナ』は、失踪したサブリナという女性をめぐり、フェイクニュースやSNSが捏造された「真実」を作り出し、それが残された彼女を知る人々の心を蝕んでいく物語なのだが、ドルナソは、現代におけるそうした問題は、何もインターネットのせいばかりではないと語る。
「『真実』をめぐるある種の葛藤は、これまでもあらゆる世代で繰り返されてきたんじゃないかな。オバマからトランプへの移行も、そうしたことの反映だと思う」
一見、スタイリッシュに見えて、ここに描かれているアメリカ人の心の闇のいかに深いことか。日本語版の出版を熱望するばかりだ。
「僕はいつも印刷物の約2倍の大きさの普通のブリストルボードに描いている。すべて自分の手でペンとインクを使ってね」
『ビヴァリー』も『サブリナ』も、彼と同じシカゴ郊外に暮らす、まるでトッド・ソロンズの映画に出てくるような、どこか心を病んでいる人々が描かれているが、ドルナソはこう言う。
「初め、彼らは僕がよく知っているアメリカ中西部に特有な人たちのつもりだったけど、今では、世界のどこにでもいる、ある特定のタイプの人たちのことだと思うよ」
そして『サブリナ』は、失踪したサブリナという女性をめぐり、フェイクニュースやSNSが捏造された「真実」を作り出し、それが残された彼女を知る人々の心を蝕んでいく物語なのだが、ドルナソは、現代におけるそうした問題は、何もインターネットのせいばかりではないと語る。
「『真実』をめぐるある種の葛藤は、これまでもあらゆる世代で繰り返されてきたんじゃないかな。オバマからトランプへの移行も、そうしたことの反映だと思う」
一見、スタイリッシュに見えて、ここに描かれているアメリカ人の心の闇のいかに深いことか。日本語版の出版を熱望するばかりだ。
『SABRINA』
ニック・ドルナソの最新作。主人公のサブリナが失踪した後の「真実」をめぐり、彼女を知る者たちの心がメディアを通して蝕まれていく様を描く。全編英語。Drawn & Quarterly刊。京都〈誠光社〉などで取り扱い中。
Nick Drnaso グラフィックノベル作家。1989年生まれ。シカゴ郊外で育つ。コロンビア・カレッジ・シカゴでアートを学ぶ。2016年、デビュー作『ビヴァリー』を発表。同作でLAタイムズ・ブック賞を受賞。先頃、待望の2作目『サブリナ』を上梓したばかり。