FASHION
ロエベ クラフト プライズ、今年の受賞作が決定!
『カーサ ブルータス』2018年7月号より
May 25, 2018 | Fashion, Art | text_Megumi Yamashita
各種の文化活動をサポートしてきたロエベ財団によって、2017年に創設された「ロエベ クラフト プライズ」。その第2回の最終候補作品と受賞作品が発表になった。
マドリッドの小さなレザー工房からスタートした老舗ブランド〈ロエベ〉。その172年にわたる歴史を未来につなごうと、昨年創設されたのが〈ロエベ クラフト プライズ〉だ。無類のクラフト好きというクリエイティブ ディレクター、ジョナサン・アンダーソンの熱き想いを発端に、伝統を継承しながら、芸術性の高い革新的なクラフトを発掘し、また奨励していこうという趣向である。その2回目となる今回、公募エントリーは86か国から2000作近くあったとか。そこからセレクトされた最終候補30作の中から、5月3日に受賞作が発表になった。
最終候補作の展示と審査、授賞式は、ロンドンのデザインミュージアムが主催。日本からは、陶、ガラス、金属、藁、と各タイプの5作品がセレクトされている。「伝統を引き継ぎながら、新しい表現や技術に挑む日本の作家への評価はとても高かったです。これを機に日本の工芸とその多様性にさらに注目が集まるでしょう」。審査員を務めたデザイナーの喜多俊之も、誇らしげに語っている。
最終審査の結果、大賞は陶芸作家のジェニファー・リーが受賞。陶芸作家の桑田卓郎、テキスタイル・アーティストのシモーヌ・フェルパンにも特別賞が贈られた。「陶芸作品が2つ受賞しましたが、リーの作品がクラシックで静であるのに対し、桑田の作品はアバンギャルドで動、そのコントラストも、ロエベが目指すものと一致します」。アンダーソンも満足気に目を輝かせた。
大賞を獲得したリーの作品は、精巧で洗練された印象だが、その手法は極めて原始的だ。細く伸ばした陶土を輪積みしてならしながら、1か月ほどかけて作られている。縞状の柄は異なる陶土を入れ込んだ部分だ。「金属やミネラルの粉を土に練り込むと、酸化で微妙な色合いが生まれ、時とともに色が変化します。天然素材と時間が生み出す風合い、陶土の接続部の滲みなどの偶発性に魅せられ作陶を続けてきました」。受賞作の黒い点は、30年ほど前に練った土が成せる技だとか。それはまさに自然と人のコラボレーション。そしてクラフトの醍醐味である。
大賞を獲得したリーの作品は、精巧で洗練された印象だが、その手法は極めて原始的だ。細く伸ばした陶土を輪積みしてならしながら、1か月ほどかけて作られている。縞状の柄は異なる陶土を入れ込んだ部分だ。「金属やミネラルの粉を土に練り込むと、酸化で微妙な色合いが生まれ、時とともに色が変化します。天然素材と時間が生み出す風合い、陶土の接続部の滲みなどの偶発性に魅せられ作陶を続けてきました」。受賞作の黒い点は、30年ほど前に練った土が成せる技だとか。それはまさに自然と人のコラボレーション。そしてクラフトの醍醐味である。