CULTURE
ソフィア・コッポラによるオペラがスクリーンに蘇る!
『カーサ ブルータス』2017年10月号より
September 13, 2017 | Culture | a wall newspaper | photo_Yasuko Kagayama text_Shoichi Kajino editor_Jun Ishida
ソフィア・コッポラがオペラの演出に初挑戦。話題作『椿姫』が、映画館で特別上映されます。
ソフィア・コッポラがオペラを! そんなニュースが飛び込んできたのは昨年春のこと。オペラの古典『椿姫』を、ソフィアの演出でコンテンポラリーな歌劇へとアップデートするという。ただし上演は〈ローマ歌劇場〉での5月、6月の15公演のみ。オペラにもローマにも縁がない僕ではあるけれど、ソフィアのフォロワーとしては、これを見逃したら絶対に後悔するに違いない。「『椿姫』を見にローマに行こうと思う」とソフィアのパートナーであるトマ(・マース)に話すと、数日後に連絡があって、取っておきの席を用意してくれるという。僭越ながら、かくしてソフィアの『椿姫』のために、僕はローマに飛んだ。
当日の昼間、オペラ座の窓口にチケットを受け取りに行った際、その脇の搬入口でちょうど衣装が運び込まれるタイミングに出くわした。真夏のローマの強い太陽の下、ラックに並べられた色とりどりの衣装の絢爛たるや、目もくらむほどだった。衣装はすべて〈ヴァレンティノ〉が制作した。そもそも今回の『椿姫』の誕生にあたっては、イタリアモード界の巨匠、ヴァレンティノ・ガラヴァーニがソフィアに直接電話をかけたことに端を発しているという。映画『マリー・アントワネット』の大胆で突飛ともいえる演出を目にしたヴァレンティノが、同じくフランスを舞台にした悲劇『椿姫』の演出家にソフィアを指名するというのは運命的。確かに美しい女性のはかない愛の悲劇という物語そのものが、ソフィアの映画世界とも重なっている。衣装、演出に加え、この古典に新鮮さを与えたのはソフィアが美術監督に抜擢したネイサン・クロウリーだ。『インターステラー』などを手がけたクロウリーの大胆な舞台作りには目を見張る。古典オペラという制限の多いフォーマットの中、随所にちりばめられたソフィアらしさ。オペラグラス片手にそれを発見するのは贅沢な楽しみであった。
そしてこのたび、この歌劇が映画となって特別上映されるという。今度は字幕の付いたスクリーンで、じっくり鑑賞したいと思う。
当日の昼間、オペラ座の窓口にチケットを受け取りに行った際、その脇の搬入口でちょうど衣装が運び込まれるタイミングに出くわした。真夏のローマの強い太陽の下、ラックに並べられた色とりどりの衣装の絢爛たるや、目もくらむほどだった。衣装はすべて〈ヴァレンティノ〉が制作した。そもそも今回の『椿姫』の誕生にあたっては、イタリアモード界の巨匠、ヴァレンティノ・ガラヴァーニがソフィアに直接電話をかけたことに端を発しているという。映画『マリー・アントワネット』の大胆で突飛ともいえる演出を目にしたヴァレンティノが、同じくフランスを舞台にした悲劇『椿姫』の演出家にソフィアを指名するというのは運命的。確かに美しい女性のはかない愛の悲劇という物語そのものが、ソフィアの映画世界とも重なっている。衣装、演出に加え、この古典に新鮮さを与えたのはソフィアが美術監督に抜擢したネイサン・クロウリーだ。『インターステラー』などを手がけたクロウリーの大胆な舞台作りには目を見張る。古典オペラという制限の多いフォーマットの中、随所にちりばめられたソフィアらしさ。オペラグラス片手にそれを発見するのは贅沢な楽しみであった。
そしてこのたび、この歌劇が映画となって特別上映されるという。今度は字幕の付いたスクリーンで、じっくり鑑賞したいと思う。
Sofia Coppola
ソフィア・コッポラ 1971年ニューヨーク生まれ。代表作に『ロスト・イン・トランスレーション』。最新作は2017年カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『The Beguiled(原題)』(今冬日本公開予定)。
Nathan Crowley
ネイサン・クロウリー 1966年イギリス生まれ。プロダクションデザイナー、アートディレクター。これまで『ダークナイト』『インターステラー』などでアカデミー賞美術賞にノミネートされている。
ソフィア・コッポラの椿姫
演出:ソフィア・コッポラ、出演:フランチェスカ・ドット、アントニオ・ポーリ、ロベルト・フロンターリ。10月6日より、TOHOシネマズ日本橋にて2週間限定公開(ほか全国順次公開)。