ART
知られざるセラミックアーティスト、ルート・ブリュック。
March 30, 2019 | Art | casabrutus.com | text_Kaori Nakada
フィンランドを代表するセラミックアーティスト、ルート・ブリュックの展覧会が開催。独自の技術を用いた手仕事によるものづくりを貫いたブリュックの作品が一堂に会する、またとない機会をお見逃しなく!
バリエーション豊かな色彩感覚と、自由な想像力、そしてセラミックを駆使することで、愛らしい陶板から公共建築物のモザイク壁画まで、様々な作品を生み出してきたセラミックアーティスト、ルート・ブリュック。フィンランドを代表するデザイナー、タピオ・ヴィルカラを夫に持ちながら、名窯アラビアの美術部門の専属アーティストとして約50年間活躍し、また版画の技法を取り入れたり釉薬を独自開発するなど、未知なる表現への追求をし続けた人物でもある。ブリュックの没後20周年を記念して『ルート・ブリュック 蝶の軌跡』が、〈東京ステーションギャラリー〉で開催される。
本展では、2016年にフィンランドやスウェーデンを巡回した生誕100周年展で展示されたものをベースに、オリジナル作品を加えた約180点のセラミックやテキスタイルが公開される。5部構成となっている展示の第1部はグラフィックデザイナーとして活躍していた当時のデッサンやグラフィックデザインを紹介。第2部では、初期から成熟期までに制作した陶器や陶板を展示する。続く第3部は50〜60年代のキャリア転換期に製作された、“アプライドアート(工芸やデザイン、建築など、実際の使用目的がありながらも作品としても評価されるもの)”に焦点を当てる。その頃に生み出された代表的な蝶モチーフの陶板が壁一面に飾られる予定だ。
展示後半の第4部では、60年代から製作を始めた、膨大な数のタイルピースで構成された作品“タイル・コンポジション”を紹介。最終章となる第5部では大型作品が披露される。このように、作風やモチーフの変遷を5部に渡って辿れるほど、さまざまに表現の可能性を模索し続けたブリュック。それでいて、どこか愛らしさと親しみを感じることができるから不思議だ。国も時代をも超越して愛され続ける、その魅力に迫ろう。
『ルート・ブリュック 蝶の軌跡』
〈東京ステーションギャラリー〉東京都千代田区丸の内1-9-1 TEL 03 3212 2485。4月27日〜6月16日。10時〜18時(金曜〜20時)。月曜、5月7日休(4月29日、5月6日、6月10日は開館)。入場料1,100円。