理系シェフのフレンチ〈アルゴリズム〉がおもしろい!|寺尾妙子のNEWSなレストラン | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

理系シェフのフレンチ〈アルゴリズム〉がおもしろい!|寺尾妙子のNEWSなレストラン

「料理は化学」をお皿で表現する〈L’ALGORITHME(アルゴリズム)〉。素材×調理で最適解を出す「フレンチ方程式」とは?

《穴子+植物の酸 死後硬直 ビーツ+バラ+リンゴ》。
メニューを見れば、その店のキャラクターがわかる。メニューは料理の構成というだけでなく、表記のスタイルから盛り付けの雰囲気や料理全体が目指す方向性がモダンなのか、クラシックなのかなどがが予測できるからだ。

白金のフレンチ〈アルゴリズム〉のメニューはiPadで提示されるのみ。

「鳥肌のち笑顔
水平線な余韻
とぼけ顔」

「クエ
Pernod
海中放血神経〆」

「500g
旨味ネラル
纏う青」

という具合である。
日本語、フランス語、数字が混在し、謎な言葉から穏やかならざる単語までが並ぶ。
メニューはiPadで。
だが、確実に食通の興味をそそる。それはメニューから、オーナーシェフ、深谷博輝さんが素材の質にこだわるのはもちろん、魚を寝かせる時間や保存温度にまで繊細に心を砕く料理人であること、そして、新しい自分だけの料理をつくろうという熱意が伝わってくるからだ。
オーナーシェフ、深谷博輝。〈銀座レカン〉〈ビストロ ボン・ファム〉でフレンチの古典を〈カンテサンス〉スーシェフとしてコンテンポラリーを学んだ。
《穴子+植物の酸 死後硬直 ビーツ+バラ+リンゴ》では明石の名産、300g以上もある大きな穴子「伝助穴子」を使用。締める時間を業者に指定し、店で保存状態をコントロールした穴子を軽く炙り、死後硬直にならではのプリプリ食感を引き出す。

かたや従来の締め方で処置し、フリットにした穴子のホクホクした食感と対比させる。穴子×死後硬直×炙り、穴子×数時間寝かせる×フリット。それは穴子をおいしくするための、最適解を導く方程式の対比だ。
料理はすべて夜コース14,500円より。《ヒョウ柄、柚子かほる、海中放血神経〆》。
ヒョウ柄とは、ヒョウ柄の皮をもつ石垣鯛のこと。皮目をパリッと焼き上げ、しゃばしゃばのソースに柚子を香らせた《ヒョウ柄、柚子かほる、海中放血神経〆》は石垣鯛に対する適切な処理あってこその一品だ。

本職、医者という漁師がモリで石垣鯛を突き、脳の神経を海中できれいに壊して血抜き処理をすることによって、0度で2〜3週間寝かせることができ、複雑な旨味が増す。目指す味わいという「解答」を出すために必要な要素が、メニュー名につけてられているのだ。
《Nancy→Paris 洋梨 une robe blanche》。
「レストランならではの、できたて洋梨のマカロン」がテーマのデザート。メニュー名にある「Nancy→Paris」は18世紀からフランス・ナンシー地方でつくられてきたアーモンド入り焼き菓子「マカロン・ド・ナンシー」をイメージしたアーモンド生地を底に、フレッシュな洋梨や洋梨のソルベや生クリームと一緒に最上部のメレンゲを食べると、1930年にパリ〈ラデュレ〉が売り出したパリ風のマカロンになるという趣向。ひと皿でフランス菓子の歴史の流れが味わえる。
カウンター8席。
「僕の頭の中にあるぼんやりとした認識値、想像値を形として出して、お客さまと共有できる値にしたい」と深谷シェフ。

美しく整った「フレンチ方程式」を導き出すまで、おそらく素材と調理法を細かく入れ替えているのだろう。ひと皿、ひと皿の「解法」はどれもシャープで、その「解答」には発見がある。シェフから出されたメニューという問題をひとつひとつ想像しながら、答え合わせをするのが楽しい。

〈L’ALGORITHME(アルゴリズム)〉

東京都港区白金6-5-3
さくら白金102 TEL 03 6277 2199。12時〜12時45分LO、18時〜19時30分LO。日曜休(月曜不定休あり)。コースは昼8,000円、夜14,500円(以上、税・サ・水込)。ワインペアリング4,500円〜、ノンアルコールペアリング5,500円(以上、税・サ込)。

寺尾妙子

てらおたえこ 食ライターとして雑誌やWEBで執筆。好きな食材はごはん、じゃがいも、トリュフ。現在、趣味の茶の湯に邁進中。