新感覚!〈&piece〉のフィンガーフード。|寺尾妙子のNEWSなレストラン | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

新感覚!〈&piece〉のフィンガーフード。|寺尾妙子のNEWSなレストラン

フレンチの新しい形はフィンガーフードのフルコース。極限までカジュアルに、そして料理は限りなくクリエイティブ!

料理はすべてコース4,200円(税別)より。「Foie gras Pandepis」。ふかして蜂蜜を加えたカボチャとフォアグラのコンフィをマーブル状に混ぜ合わせて、砕いたローストピスタチオをまとったアイスバー。まわりにパン・デピスに加えるアニス、シナモン、ナツメグ、クローヴなどの香辛料を添えて。
東京で最も進化したフレンチのひとつが〈&piece〉だ。マナーやドレスコード、価格といったフレンチにありがちな高い敷居をうんと下げながら、料理はエスニックなど各国料理の要素も取り入れたモダンでクリエイティブ。そして空間はカフェのようなカジュアルさ。

昼夜4,200円で15品のコースは、お楽しみの連続だ。13〜14品はフィンガーフードにつき、卓上にはフォークもナイフも置かれない。

1品目、ピスタチオをまとったひんやり冷たいフォアグラはアイスバーで登場する。見た目は遊び心いっぱいだが、特にフランスではフォアグラの付け合わせとして定番の焼き菓子、パン・デピスの要素を取り入れるなど、ベースには伝統的なフランス料理がある。
山岸正祈シェフ(左)。1986年、愛知生まれ。恵比寿〈ジョエル・ロブション〉、銀座〈ロオジエ〉、中目黒〈クラフタル〉を経て、2019年5月〈&piece〉シェフ就任。
シェフ、山岸正祈は恵比寿〈ジョエル・ロブション〉、銀座〈ロオジエ〉といった東京屈指のグランメゾンでフランス料理の技術を身につけてきた。そんな彼がなぜ、テーブルクロスはおろか、カトラリーもないスタイルで料理を出すことにしたのか?

「バンコクの〈ガガン〉に行ったら、コース25品の全部がフィンガーフードだったんです。日本には握り寿司がありますが、フレンチでもこれはアリかも! と思ったんです」(山岸)。

〈ガガン〉はバンコクにあるモダン・インド料理店。アイデアいっぱいの世界観が注目され、2014年より4年連続「アジアのベストレストラン50」の1位を獲得している。山岸はフィンガーフードのコースを提供することで、ガストロノミーの最先端をゆく一軒の後に続こうとしているのだ。
主素材であるヒヨコマメの写真の上に置かれた「&piece」。ヒヨコマメのパウダーに水、チキンブイヨンなどを加え、火を加えて煉ってから、型に流してサラダ油で揚げる。シャンパンとも好相性のおつまみ。
また、山岸はこうも語る。

「手で食べることによって、料理本来の味や香りだけでなく、直に伝わる感触や温度も最大限に感じてもらえたらということも意識してコースを構成しています」

コースは1ヶ月ごとに内容が変わるが、シグネチャーディッシュは形はそのままで、その内容を変えていく。パズルのピースをかたどった「&piece」もそのひとつ。7月はスペインやメキシコで親しまれるヒヨコマメを使った塩味のパニスとして、前菜として供されている。

手に取ると、ほの温かく表面はザラッ。

フィンガーフードならでは、肌で感じる質感や温度も味のうち。噛めばサクサク、中身はフワフワの揚げ物だ。ちなみにオープン当初はチーズケーキ、メロンパンとデザートだった。
「Sardine Tapunard」。イワシのコンフィと黒オリーブのパウダーという主張の強い旨みを、飴色になるまで火を入れた玉ネギの甘みがつなぐ役目。下の骨せんべいは飾り。
ずっとフィンガーフードでお腹いっぱいになる?

心配は無用だ。前菜、メイン、デザートまで、ほぼフィンガーフードだが、中盤から味にパンチを効かせ、存在感が増すよう計算されている。全15品の折り返しにあたる9品目、イワシ料理「Sardine Tapunard」は、魚のメインディッシュ相当の一品。

イワシを原料とするアンチョビを使った南仏の郷土料理、ピサラディエールをイメージしたもの。サクッと歯切れのいいパイ生地に乗ったイワシのコンフィは、旨みが凝縮されて、わずか2,3口でも印象に残る。その後、ソフトシェルクラブや鶏のひと口メインが続き、締めものが来る。今月はタイのガパオライスを豚ではなく、仔羊でつくったひと皿だ。