カール・ラガーフェルドが愛したデザイン|石田潤のIn the mode | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

カール・ラガーフェルドが愛したデザイン|石田潤のIn the mode

”ファッション界の帝王” カール・ラガーフェルドがこの世を去った。メンフィスやアール・デコの家具コレクターであり、建築への造詣も深かった彼のデザイン愛を振り返る。

2005年、〈シャネル 銀座〉オープニング時に来日したカール。安藤忠雄との対談の最中、突然カメラを構え、安藤のポートレイトを撮影した。 photo_Aya Tokunaga(kiki inc.)
巨星墜つ。ファッション・デザイナーのカール・ラガーフェルドが2月19日の朝、この世を去った。訃報が流れるや否や、私のインスタグラムはカールの写真と彼へのメッセージで埋め尽くされ、グッチのアレッサンドロ・ミケーレからヴァージル・アブローまで、ブランドも世代も超えたデザイナーたちが彼の死を惜しんだ。

享年85歳。1958年に自らのブランドの最初のコレクションを発表して以来、60年以上にわたって現役のデザイナーだった。予兆は昨年からあった。2018年10月に行われたシャネルのプレタポルテのショーで、最後に登場したカールの姿はかつてない憂いを帯びていた。奇しくもショーの演出は、〈グラン・パレ〉に人工のビーチを作るというもので、海辺のロッジから会場を見渡すカールは、さながら映画『ヴェニスに死す』のラストシーンを思わせた。そして今年1月に開催されたシャネルのオートクチュールのショーには、カールが現れることはなかった。

カール・ラガーフェルドのファッション界における功績を讃える記事はこれからも数多く生み出されるであろうが、ここでは彼の家具や建築、そして本への愛を振り返りたい。

カールは家具コレクターとしても有名で、80年代にはモナコにメンフィスの家具で埋め尽くされた「メンフィス・アパートメント」も所有していた。2002年5月号の『カーサ ブルータス』ではパリのアトリエを取材しているが、パレ・ロワイヤルにほど近いアパルトマンにあるプライべートな空間には、メンフィスのデザイナーであるアンドレア・ブランジの椅子からアール・デコを代表するジャン・ミッシェル・フランクのテーブル、倉俣史郎の引き出しなどが 所狭しと置かれていた。時代もスタイルも異なるものが、カール・ラガーフェルドの審美眼のもとに集められると、ひとつのハーモニーが生まれるから不思議だ。近年ではデザインにも挑戦し、昨年10月にはパリのカーペンターズ・ワークショップ・ギャラリーで、彫刻作品のような大理石のテーブルと鏡、そして噴水盤を作り発表していた。