90年代、極私的なファッション写真の系譜|石田潤のIn The Mode | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

90年代、極私的なファッション写真の系譜|石田潤のIn The Mode

開催が延期されていた〈東京都写真美術館〉の『写真とファッション 90年代以降の関係性を探る』展が始まった。ファッション誌『Purple』のコラボレーターを中心に構成された展示は、ファッションにおける極私的な系譜を浮かびあがらせる。

1994年に〈パリ市立現代美術館〉で開催された『L'HIVER DE L'AMOUR BIS』展カタログに掲載されたアンダース・エドストロームの写真。カタログの編集を当時『Purple Prose』(『Purple』の前身)を立ち上げたばかりのエレン・フライスとオリヴィエ・ザムらが手かけた。
ここ数年、90年代がブームだ。ファッションの世界もそうで、90年代のファッション、写真、デザインなどが、若手クリエイターのインスピレーションソースとしてしばし挙げられる。正直なところ、90年代をリアルに体験したものとしては少しこそばゆい。自分が青かった20代の記憶が呼び起こされ、まだ客観視できないからかもしれない。
『Purple』のコラボレーターのひとりである髙橋恭司の作品。《Life Goes On》(1996)より。
でも振り返ってみれば、90年代自体が極私的な時代だったようにも思える。ファッション界では、デザイナーも写真家も、極私的な世界観を表現するクリエイターが登場し、注目を集めた。そしてそのムーブメントの中心にあったのがフランスのファッション誌『Purple』だ。東京都写真美術館で始まった「写真とファッション 90年代以降の関係性を探る」は、『Purple』で活躍した写真家、デザイナーを中心に、90年代から現在にかけての写真とファッションにおけるこの極私的な流れを切り取っている。少なくとも、その時代にファッション誌を作っていた私には、そう思えた。
展覧会会場には『Purple Prose』、『Purple』、『Purple Journal』のバックナンバーが置かれたコーナーも。展示を監修した林央子が編集する『here and there』も揃う。
展示は大きく3つのパーツに分けられる。最初に登場するのは、90年代を象徴する2人の写真家のセクションだ。『Purple』でもお馴染みのアンダース・エドストロームと髙橋恭司の写真が導入部を飾る。アンダースは、マルタン・マルジェラのコラボレーターとしても知られる。マルタン・マルジェラはショーでよく、プロのモデルではなく、友人知人やストリートキャスティングした一般の人々をモデルに起用したが、アンダースもまた、彼の周りにいる人物などをモデルに撮影している。主な撮影場所はストリートだ。モデルが都市の路上を歩く姿、たたずむ姿をカメラで切り取った。

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