川久保玲が初めて衣装デザインを手掛けたオペラ|石田潤のIn The Mode | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

川久保玲が初めて衣装デザインを手掛けたオペラ|石田潤のIn The Mode

上演前から注目を集めていたウィーン国立歌劇場の新作オペラ『オルランド』が、ついにベールを脱いだ。女性クリエイターにより製作された異例の作品の衣装デザインを手掛けたのは、コム・デ・ギャルソンの川久保玲。果たしてどのようなクリエイションが展開されたのか?

『オルランド』第1部。映像を巧みに用いたセットデザインも目を引いた。 ©Wiener Staatsoper / Michael Pöhn
川久保玲が初めてオペラの衣装をデザインした。演目は、12月にウィーン国立オペラ座で上演された新作オペラ『オルランド』だ。川久保を始め、作曲家、脚本家、演出家に全て女性を起用する試みは歴史あるこの劇場で初となり、上演前から大きな注目を集めた。

『オルランド』は、1928年にヴァージニア・ウルフが発表した小説を元とする。16世紀イギリスに生まれた16歳のオルランドは、詩人を目指しエリザベス一世の寵愛を受ける。女王の死後、大使としてトルコに赴任するが現地で起きた暴動の最中に昏睡状態に落ち入り、目覚めると身体が女性に変化していることに気づく。以後、母国に戻ったオルランドは若さを保ったまま世紀を超えて(300年も!)女性として生き続け、詩人として成功し、結婚・出産も経験する。摩訶不思議な話だが、ジェンダーの垣根を超え、男性、女性という二つの性を体験するというテーマは何とも現代的だ。1992年にはサリー・ポッターにより映画化され、主人公のオルランドを演じたティルダ・スウィントンはアンドロジナスのアイコンとなった。
オルランドが目にした世界がスクリーンで展開される。 ©Wiener Staatsoper / Michael Pöhn
第2部では女性になったオルランドが体験する、18世紀イギリスにおける女性としての生きにくさも描かれる。 ©Wiener Staatsoper / Michael Pöhn
ホロコーストで亡くなったユダヤ人の名がスクリーンに表れる。 ©Wiener Staatsoper / Michael Pöhn
オペラ版『オルランド』は、原作世界をさらに拡張する。2部構成からなるオペラは、1部はほぼ原作に沿った展開だが、2部では1928年で終わる原作の後に続く世界が描かれる。第2次世界大戦、ホロコースト、原爆投下による戦争の終結、べトナム戦争、ベルリンの壁の崩壊……。セットにビジュアルブックをふんだんに用い、一気に20世紀史を駆け抜けていく展開は圧巻だ。やがて時代が現代に近づくと、オルランドの子供が新たな世代のリーダーであるかのごとく登場する。トランスジェンダーとなった彼/彼女は、ジェンダーフリーを掲げ、高らかにレディ・ガガの「Born This Way」を歌い上げる。さらにはその次の世代を担う代表としてグレタ・トゥーンベリを思わせる子供たちが登場し、「私たちの地球が危ない!」と警告。スクリーンに現れた「The Future」という文字とともにオペラは幕を閉じる。

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