建築家・隈研吾×アシックスが目指したデザイン。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

建築家・隈研吾×アシックスが目指したデザイン。

隈研吾が設計に関わった〈国立競技場〉がまもなく完成、というタイミングで〈アシックス〉とのコラボシューズが登場した! 建築とシューズデザインに共通する哲学とは?

・機能性を極めることで生まれるデザイン。

「軽くて歩きやすい、ナチュラルな靴がほしい」。そう考えていた隈研吾のもとに〈アシックス〉から「シューズをデザインしてほしい」という依頼があったのは今年の春。

「これからは歩き、走る時代だと思うんです。僕自身、うんと歩くようになってきた。とくに事務所があるパリでは街中を1時間ぐらい歩くことがよくある。その間に考えごともできるし、身体の健康にも精神にもいい」

今回、シューズをデザインするにあたって重視したのは「ナチュラルな感じ」だそう。

「裸の自分に戻って光を浴びて、風を感じられるものにしたい」

こんな考えから出来上がったのが《METARIDE AMU》だ。まず目につくのが不規則な編み目が甲の部分を覆っていること。竹細工の「やたら編み」と呼ばれるパターンを元にデザインしたものだ。

「もともと僕はこのやたら編みを建築でもよく使っていたんです。やたら編みにすると斜めの線が入るので、構造的に強くできるのも気に入っていました」

《METARIDE AMU》ではこのやたら編みをランダムにデザインしている。太さも甲や足指の部分では伸び縮みしやすいよう細めに、底中足部部分はしっかりと支えられるよう太めにした。
これまでの試作品が並ぶ隈の事務所。やたら編みの異なるパターンや全く違うデザインも検討されている。
平面、立体とさまざまな角度からやたら編みを検討する。
薄茶色の部分には木から作ったセルロースを原料とする素材が使われている。最終的には自然に還る材料だ。「建築にも応用できそう」(隈)。
完成品の履き心地を確かめる隈。
実際に履いてみた隈は「思っていた軽さだった」と満足そう。

「軽さと守られている感じとが両立していて気持ちがいい。足が自然に前に出る感じもいいですね」

建築でこの二つの要素を両立させるのは難しいのだが、隈が設計に関わっている〈国立競技場〉では隙間を空けて木材を配置、風が抜ける開放感と守られている安心感とが得られる。もう一つ、この編み目と本体とがレイヤーになっているのも重要だ。

「層になっているので柔らかい履き心地になりました。建築でも十二単のように優しいレイヤーを重ねながら作っていくことが多い」

 簡単に履けるのもポイントの一つ。履き口が柔らかいのですっと足が入り、あとはシューレースを締めるだけ、という手軽さだ。

「子どものころ学校から帰ると裸足になって、長靴で裏山や竹藪を走り回っていたんです。たぶん、簡単にぽんと履けて風通しがいいルーズさが好きだったんでしょう」

この靴は海外出張のときに履くのが楽しみ、とも言う。

「工事現場に行った日にパーティーに招かれることもよくあります。エレガントな《METARIDE AMU》なら山の中でも、フォーマルな場でも対応できる」

独特の外観は求められる機能に応じて導き出されたもの。建築にも通じる機能美を備えた靴から、新しいアイデアが生まれそうだ。

《METARIDE AMU》

〈アシックス〉創業70年目となる今年発表された〈METARIDE〉と隈とのコラボ。つま先にかけ大きくカーブしたソールと、緻密に計算された硬度のソールで、足首の屈曲を抑えエネルギー消費を軽減する〈METARIDE〉がベース。足を柔らかく、かつしっかりホールドするやたら編みを採用したアッパーと、クイックシューレースを採用。12月20日より直営店とオンラインストアで発売。36,000円(世界限定2,020足)。

●問合せ/アシックスジャパンお客様相談室 TEL 0120 068 806。

隈研吾

くまけんご 1954年生まれ。1990年、隈研吾建築都市設計事務所設立。竣工間近の〈国立競技場〉の設計に携わる。近作に〈ヴィクトリア・アンド・アルバート・ダンディ〉、進行中のプロジェクトに〈JR高輪ゲートウェイ駅〉など。著書に『建築家、走る』(新潮文庫)ほか。

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