デザインを主張する家具の価値を体感させる〈リヒト〉|土田貴宏の東京デザインジャーナル | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

デザインを主張する家具の価値を体感させる〈リヒト〉|土田貴宏の東京デザインジャーナル

歴史的な逸品から、80~90年代の隠れた名作、そして現在の気鋭デザイナーの作品まで。インテリアについての新しい視点を提案するギャラリー〈リヒト〉がオープン。

時代も国籍も様々なデザイナーが手がけた家具が、白い光に包まれた空間にコーディネートされている。
家具を中心に扱うギャラリーは、海外の多くの国で定着しているが、日本にはまだ根づいていない。しかし、そんな状況も変化しつつあるようだ。昨年12月にオープンしたギャラリー〈LICHT〉は、これからの動きがひときわ注目される新しいスペース。新旧のアイテムを分け隔てなくセレクトし、オリジナルの家具やアートピースも並ぶ構成が独特だ。オーナーの世界観が明確に表現されるとともに、先鋭的なデザインと日常の暮らしを結びつけようという意向を強く感じる。

〈LICHT〉をオープンしたのは、北欧家具をメインに取り揃える中目黒のショップ〈HIKE〉のオーナー、須摩光央だ。新たにスタートしたギャラリーのコンセプトについて、彼はこう話す。

「ここで扱うようなデザインを実際に見られる場所が、東京にほとんどないと感じていました。年代の垣根を超えた、プレイフルでユニークな家具を集合体として見て体感することは、とても大事だと思うんです」
テーブルとそれに合わせた椅子はジャスパー・モリソン、左のラウンジチェアはブルクハルト・フォークトヘル、ゴミ箱はエンツォ・マーリによるもの。
エットレ・ソットサスによる椅子で、すでに廃番の《マンダリンチェア》。右のガラスはスウェーデンのエリック・ホグランのヴィンテージ。
テーブルとそれに合わせた椅子はジャスパー・モリソン、左のラウンジチェアはブルクハルト・フォークトヘル、ゴミ箱はエンツォ・マーリによるもの。
エットレ・ソットサスによる椅子で、すでに廃番の《マンダリンチェア》。右のガラスはスウェーデンのエリック・ホグランのヴィンテージ。
須摩さんは、約3年前に原則非公開のスペース〈SMALL〉をつくり、北欧以外のアイテムを実験的に扱ってきた。そのアプローチをさらに大きな場所へと発展させようと考えていたが、この空間に出会って〈LICHT〉のオープンを即決したという。店内に並ぶのは、1910年代から活動したオランダのヘリット・トーマス・リートフェルトはじめ、歴史的なデザイナーから現在の新進気鋭のデザイナーによる家具まで幅広い。エットレ・ソットサス、内田繁、フィリップ・スタルク、ジャスパー・モリソン、テヨ・レミ、マイケル・アナスタシアデスといった著名デザイナーたちの作品もある。それぞれにデザインを主張するアイテムの中で、特に目立つのは90年代前後に生まれたデザインだ。

「自分が多感な頃に見ていた家具を掘り起こしています。今は当時の家具の情報が少なく、葬り去られそうな時代感があって、でもデザイナーは本当にすごいことを楽しんでやっていた。ほとんどのデザイナーは存命なので、了解を取って復刻したいものもあります。たとえばフィリップ・スタルクやジャスパーなど、今は少し保守的だけど、あの時代らしいものを作っていたと思う」
中央はジャスパー・モリソンによるソファ《オブロング》。ソットサスやリートフェルトの家具とコーディネートしている。
左の椅子は90年代に一大ブームになったオランダの〈ドローグ〉で発表されたテヨ・レミの《ラグチェア》。右のフロアライト《ビッグシャドウ》はマルセル・ワンダース、奥のソファは〈リヒト〉のオリジナル。
中央はジャスパー・モリソンによるソファ《オブロング》。ソットサスやリートフェルトの家具とコーディネートしている。
左の椅子は90年代に一大ブームになったオランダの〈ドローグ〉で発表されたテヨ・レミの《ラグチェア》。右のフロアライト《ビッグシャドウ》はマルセル・ワンダース、奥のソファは〈リヒト〉のオリジナル。
須摩さんがリートフェルトの家具を扱うことには、こんな理由がある。

「20世紀初めから、単純な素材をミニマルに構成しようと試みたリートフェルトは、形も着想もとても好きです。その手法は、80年代や90年代のデザイナーにも影響を与えたはずで、一緒に置くと連動するものが見えてきます」

今後、〈LICHT〉には、アメリカのミニマル・アートの代表的存在であるドナルド・ジャッドによる家具も入荷する。また90年代から2000年代にかけてもミニマリズムの流行があり、一時はジャスパー・モリソンもその流れの中に位置づけられていた。それぞれに背景は違っても、共通する感性を感じることができる。