Good TOOLS For Me|愛用の靴べらを教えてください。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

Good TOOLS For Me|愛用の靴べらを教えてください。

『カーサ ブルータス』2018年6月号より

毎回3人のゲストに愛用の日用品を教えてもらうコーナー。今回はファッションのプロがおすすめする靴べらです。

アンティークの水牛製のシューホーン

この素朴な雰囲気がたまらない。素材を生かし、変に作り込んでいる感じがないところが潔くてよいです。この出逢いに感謝しています。
靴べらは何年も探し続けていたのですが、しっくりくる物がなかなか見つけられずにいました。でも、その出逢いはある日、突然やってきたのです。それは十数年前、何げなく入ったアンティークショップでの出来事でした。店の片隅に靴べらを見つけ、自分の踵に当てた瞬間に「あっこれだ!」と直感したのです。その靴べらは幅が狭く彫りの深い形で、踵が小さな自分の足にピッタリでした。また僕は靴を座って履く習慣があるので、反りの強いアーチ形状は好都合。短靴はもちろん、ブーツの筒にもフィットする守備範囲の広さも気に入りました。素材は水牛の角を研磨したもので、滑りが良く、形は過剰な装飾がないので、裏革を傷めることもありません。僕はその物が著名か否かには興味がなく、自分に合っているかどうかをモノ選びの基準としています。この靴べらが、一体いつどこで誰が作ったものか。今となっては調べることもできませんが、たとえ出自がわからなくとも、僕の最高のパートナーであり、名もなき名品であることに変わりありません。

金子 真 シューズデザイナー

かねこまこと シューズブランド〈CALMANTHOLOGY〉デザイナー。約17年間シューズデザイナーとして経験を積み、2018年ブランド設立。公式サイト