ヘラ・ヨンゲリウスが仕掛ける異色のインスタレーション。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ヘラ・ヨンゲリウスが仕掛ける異色のインスタレーション。

『カーサ ブルータス』2018年2月号より

ミュンヘンの〈ピナコテーク〉で、デザインとアートの垣根を越える、冒険的な試みが行われています。

デザインの可能性や潜在性は搾取されてはいないだろうか?【?has the full potential of design been exploited?】 「PossiBiLiTIES(可能性)」の文字をつくるオブジェが回転し角度が変わると、壁に投影されるのはトーネット、マルセル・ブロイヤー、グルチッチなどの名作チェア!
ヘラ・ヨンゲリウスとルイーズ・ショウエンベルクは、2015年ミラノサローネで「ビヨンド・ザ・ニュー デザインの理想への探求」というマニフェストを発表した。デザイン界で名を馳せるオランダ出身の二人は、デザイン業界のエスカレートする新製品崇拝の風潮に疑問を投げかけている。

17年秋からミュンヘン〈ピナコテーク・デア・モデルネ〉でスタートした展示は、このマニフェストをベースにした、世界で最も古い1万点を超えるデザインコレクション「ノイエザムルング(ニューコレクション)」とのコラボレーション。4台のカラフルな光と影のインスタレーションやパタノスタ(縦に並んだ複数の展示台がくるくると回転して入れ替わる自動循環プラットフォーム)を利用した作品など、この美術館だからこそできる動きのある展示だ。美術家がある特定の場所で表現する“サイトスペシフィックアート”の手法をデザイン展でユニークに実現している。
展示を手がけたのはこの二人!

ヘラ・ヨンゲリウス 
プロダクトデザイナー。テキスタイルを中心に工芸と最新技術を融合し、独自の作風を貫く。〈ヴィトラ〉や〈ダンスキナ〉のカラーディレクターでもある。

ルイーズ・ショウエンベルク 
アイントホーフェン・デザインアカデミー、コンテクスチャルデザイン科教授。ユニークな視点の現代美術とデザインに関する論評、著書多数。
なぜ、有り余るほどのデザインが世に生まれているのか?【?why design for a world of plenty?】 毎年、無数のデザインプロダクトが生産されては右から左へと流れるように消費されていく…その繰り返しの様子を、OHPに描かれたイラストを回転させて投射し表現している。
「ビヨンド・ザ・ニュー」真のイノベーションを求めて

展示のタイトルでもある「ビヨンド・ザ・ニュー(新しさを超えて)」のニューという言葉は、すなわち、イノベイティブであるかどうかだとルイーズは語る。

「現在の消費社会では、同じスタイルのデザインのバリエーションが出回っているだけのものが多い。新しいデザインが本当に革新的なのか、それとも世の中に新しいという名ばかりのものがまた増えるだけなのか、というのが私たちの議論です。このマニフェストは、コンテンポラリーデザインが過剰生産や行き過ぎたノベルティーなど間違った方向へ進むことを危惧して、高い理想を嘆願したものなのです」
過去の優れたデザインを通して、どれだけ実りある対話を導くことができるか。 【?how to entertain a vivid dialogue with the archive?】 歴史は現在につながっている。今まで生み出された様々な技術を取り入れて織られた厚手のラグに、過去に交わされたものづくりに関するダイアローグの文字が投影されている。
デザイナーのヘラと教育者のルイーズ。彼女たちの一貫した姿勢は、とにかくリサーチを怠らないということ。

「色やテキスタイルを時代のニーズに合わせたりと、デザイナーとして産業と消費者をつなぐフィルターになりたいと考えてきました。17年間、何が私たちの社会に欠けているかを考え、実験を重ね、新しいアイデアを提示してきたのです」とヘラは自身のキャリアを振り返る。

またルイーズは、評論家・教育者として、過去と未来を配慮し、知識を常に時代に合わせてアップデートしているという。

「決定的な回答はないのです。ただ、世界の変遷に合わせて、私たちはデザインを再定義する必要があると思います」

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