謎のコレクターが収集した絢爛たる末法の美の世界。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

謎のコレクターが収集した絢爛たる末法の美の世界。

『カーサ ブルータス』2017年11月号より

杉本博司がリスペクトを捧げる謎のコレクター「夢石庵」の美意識を再現する、初めての展覧会。

《弥勒菩薩立像》(部分)、像高82.0cm、鎌倉時代。
《蔵王権現立像》像高106.9cm、平安時代。
《風鐸付経筒》高31.8cm、径7.1cm、天治元(1124)年。
《弥勒菩薩立像》(部分)、像高82.0cm、鎌倉時代。
《蔵王権現立像》像高106.9cm、平安時代。
《風鐸付経筒》高31.8cm、径7.1cm、天治元(1124)年。
原三溪や藤田伝三郎など、近代に名を成した古美術のコレクターは数多い。だがここにもう1人、その名やコレクションがごく一部にしか知られてこなかったコレクター「夢石庵」がいる。既に本人は亡く、コレクションも散逸しているが、その類いまれな美意識の下に集められた作品がどれほどのものだったのか、夢石庵の関係者や有識者が展覧会の実行委員会を組織、企画したのが、『末法 -Apocalypse- 失われた夢石庵コレクションを求めて』だ。

会場構成を担当した杉本博司も、夢石庵に敬意を捧げる実行委員の1人。杉本自身がそうであるように、仏像、仏画、書跡、陶磁、染織から近世絵画に至る、幅広い領域の作品を収集した夢石庵のコレクションの中から、「末法」をテーマにその世界観を再現しようという、コンセプトの発案者でもある。末法とは、釈迦の入滅後、仏の教え、それを実践する行、その結果としての証(悟り)を得ることのできる千年間(正法)、教えと行はあっても証を得られない千年間(像法)、以後は教えのみが残り、修行する者も悟りを得る者もいない暗黒時代(末法)が1万年続くという、ある種の終末思想。その暗黒から逃れたい、という願いの真摯さゆえにか、類を絶した完成度と高い精神性を感じさせる仏教美術を中心に、百万体の観音像を5分間で見せる、杉本の映像作品《Accelerated Buddha》の4K版(日本初公開)などによって、夢石庵の美の世界を再現する。
《紺紙金字弥勒上生経残闕》縦15.0cm、横125.1cm、寛弘4(1007)年。
杉本博司《Accelerated Buddha》Mixed Media、2017年。吉野の金峯山は修験道の霊地、また弥勒下生の地として信仰を集め、藤原道長をはじめ多くの貴族が、仏法の衰えによって経典が失われることを防ぐため、経典を収めた経筒、鏡などを埋納した。
©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

末法 -Apocalypse-失われた夢石庵コレクションを求めて

〜12月24日。

〈細見美術館〉

京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
TEL 075 752 5555。10時〜18時(入場は〜17時30分)。月曜休。入場料1,300円。茶会、トークイベントも。