注目の建築ユニット、フィールデン・ファウルズの新作がカーライルに完成。|山下めぐみのロンドン通信 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

注目の建築ユニット、フィールデン・ファウルズの新作がカーライルに完成。|山下めぐみのロンドン通信

春に続き、11月頭から再びコロナ禍でロックダウン中のイギリス。ロックダウンの合間にギリギリ取材ができた〈カーライル大聖堂〉の増改築〈フラタニー〉についてリポートしたい。

歴史ある大聖堂の増改築を手掛けたファーガス・フィールデン(左)とエドモンド・ファウルズ。 photo_Megumi Yamashita
カーライルへはロンドンから電車で約4時間。長旅ながら湖水地方の雄大な景観などを通過しながらの鉄道の旅は楽しい。スコットランドとの境に近いカーライルだが、古代ローマ時代にはローマ軍がここまで侵略。ここはローマ帝国の最北端の地だった。紀元2世紀に造られた防御壁〈ハドリアヌスの長城〉は今も一部が残り、こちらは世界遺産にもなっている。ローマ勢が退散後も軍事の要所であり、幾多の戦いの舞台となってきた。

現在は高齢者の姿が目につく平和な地方都市という印象だが、ランドマークでありその波乱の歴史を今に伝える存在が〈カーライル大聖堂〉だ。創設は1122年。イギリスにキリスト教を伝えた聖オーガスティン修道院として建立され、13〜14世紀にはゴシック様式で増築。今回増改築になった〈フラタリー〉は修道院の食堂などとして1500年ごろに建てられるが、間も無く離婚問題からローマ教皇と対立した国王ヘンリー8世が修道院を強制的に解散。財産を没収されるという憂き目にあう。

その後もイングランド内戦時時には大聖堂の石材などが持ち去られるなど、文字通り「傷だらけ」となり、かつて中庭を囲むように建てられていたアーチ回廊も一部が残るだけでほぼ消失。イングランド国教会の聖堂として生き残るが、21世紀に入り、信者として教会を利用する人は年々減少。2005年に就任した主任司祭は、この歴史的遺産を地域の人が多目的に使える場、そして収入源にもなる場にしたいと考え始める。2014年、増改築のコンペで指名されたのが、若き建築ユニット、フィールデン・ファウルズだった。

昨年、各賞を受賞した〈ヨークシャー彫刻公園〉の〈ザ・ウェストン〉で話題になった彼らだが、このコンペに勝った時点ではまだメジャーな作品は持たない30歳そこそこの駆け出し。歴史と伝統を重んじる教会が、若い彼らにプロジェクトを託したのは、デザイン的なことだけでなく、フレッシュで聞く耳を持つ姿勢に可能性を感じたからだろう。

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左が現在も教会として使われている大聖堂で、右が修道院の食堂などだった〈フラタニー〉。パビリオンは〈フラタニー〉と接続する。 photo_Peter Cook
かつて中庭を囲むように建てられていた回廊のアーチの残骸。パビリオンの位置やデザインはこの回廊へのオマージュでもある。 photo_Peter Cook
赤い砂岩は断層の縞模様がアーチ沿って放射線状に見えるように、CNCマシンで切削されている。 photo_David Grandorge
パビリオンの中はカフェ。礼拝には来なくても、お茶をしに来る人が少なからずのようで。 photo_Peter Cook
地元の住人の意見も取り入れながら進行した案は、かつて回廊があった部分に〈フラタリー〉のエントランスにもなるパビリオンを増築するというものに決まったが、最初に提案した直線的な全面ガラスのデザインは不評につき仕切り直しに。最終的にゴシック様式のアーチを現代的に解釈したデザインが採用となった。
 
アーチの部分には地元産の赤い砂岩を使用。コンピュータ数値制御(CNC)で石材を切削加工するなど、ハイテク技術を駆使しながら、ローテクな職人の手仕事で仕上げられている。砂岩は断層の縞が見えるように切削され、アーチ部分ではその縞が放射線に見えるように配置。ゴシックアーチの彫刻飾りに代わり、この自然な縞が微妙な装飾性を与えている。アーチには一面ガラスが貼られ、透過性の高い軽やかな印象だ。

パビリオンのエントランスの左側には〈フラタリー〉と接続するガラス張りのボックス型のリンクがあり、その昔、修道院の食堂や図書館として使われていた大ホールへと続く。長年、間仕切りなどがあり、有効に使われていなかったスペースは、空調や照明、収納などが整備され、イベントやパーティーなどに貸し出しできるホールに生まれ変わった。その下階の半地下のスペースはワークショップなどにも使えるように整備され、ともにコロナ禍の終息を待つばかりだ。
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