DESIGN
ポスターに見る、鮮烈なキューバのグラフィックパワー。
November 8, 2019 | Design | casabrutus.com | text_Chiyo Sagae
キューバ革命から60周年の今年。1960年代~70年代に政治的、文化的に活用されたポスター文化の開花に始まるキューバのグラフィスム、その歴史を体験する展覧会が、〈パリ装飾芸術美術館〉にて開催中だ。
革命後の20世紀後半を通じ、封鎖や孤立を伴う国の状況により長らく国外に知られることがなかったキューバのポスター文化だが、近年ついにその閉ざされた扉が開かれた。これらの作品を通して見えてくるのは、島国キューバの特異な歴史背景だ。
フィデル・カストロによる1959年の革命まで、キューバのポスターは、アメリカの商品の消費を促すアメリカ式の広告に準じるだけのものだった。そこに終止符を打ったのが、チェ・ゲバラだ。1961年産業大臣に就任するや、商業広告を全面的に禁止した。こうしてキューバのポスターは政治・文化的な目的だけに制作されるようになる。
フィデル・カストロによる1959年の革命まで、キューバのポスターは、アメリカの商品の消費を促すアメリカ式の広告に準じるだけのものだった。そこに終止符を打ったのが、チェ・ゲバラだ。1961年産業大臣に就任するや、商業広告を全面的に禁止した。こうしてキューバのポスターは政治・文化的な目的だけに制作されるようになる。
キューバの政治ポスターの多くは革命史にインスピレーションを得、英雄をモチーフに国際的な孤立や革命への理解を国民に普及した。文化面では、全国各地で上映される映画がほぼ唯一のポスター制作の目的に。とはいえ、社会主義の美的レアリズムに準じた他の共産国との大きな違いは、ポップアート、サイケデリック、キネティクスといった世界のアートシーンを背景に自由闊達な表現に満ちていることだ。「美術館やギャラリーでアートに触れる機会のない人民の、大きな視覚ディスプレイなのだから」と、カストロはポスターというメディアにアーティスティックな表現の自由を与えたと言われる。
旧ソ連崩壊にともなうキューバの深刻な経済危機が、それまでのポスター制作の終焉を告げる。公の秩序が著しく低下する中、ISDI(高等デザイン学院)の若い卒業生たちは新たな表現の自由を掲げ、90年代以降は長い間のキューバポスター特有のグラフィズムを意図的に挑発するかのような作品を生み出して行く。革命の時代から新世代のアーティストまで、各時代を彩った名作キューバポスターが一堂に会す、またとない機会だ。
旧ソ連崩壊にともなうキューバの深刻な経済危機が、それまでのポスター制作の終焉を告げる。公の秩序が著しく低下する中、ISDI(高等デザイン学院)の若い卒業生たちは新たな表現の自由を掲げ、90年代以降は長い間のキューバポスター特有のグラフィズムを意図的に挑発するかのような作品を生み出して行く。革命の時代から新世代のアーティストまで、各時代を彩った名作キューバポスターが一堂に会す、またとない機会だ。
『キューバのポスター:革命と映画 1959年~2019年』
〈パリ装飾芸術美術館〉
107, rue de Rivoli 75011 Paris。10月31日~2020年2月2日。11時~18時(木曜~21時)。月曜休み。入館料:11ユーロ。