デザインの可能性を探り続けた、粟津潔。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

デザインの可能性を探り続けた、粟津潔。

戦後、日本のグラフィックデザインをけん引した粟津潔の軌跡を追う没後、最大規模の個展が〈金沢21世紀美術館〉で開催中だ。

《CHANGEのアースマン》1993年 
戦後の日本を代表するグラフィックデザイナー、粟津潔。1955年のポスター作品《海を返せ》が日本宣伝美術会賞を受賞して以来、原水爆禁止のアピールや韓国民主化運動を支援するポスターなど、作品を通して“社会をいかにデザインするか”を問い続けてきた。そんな粟津の没後10年に当たる今年、60年に渡って手がけた作品を集めた個展が、〈金沢21世紀美術館〉で開催中だ。
《海を返せ》(原画)1955年。日本宣伝美術会賞を受賞。デザイナーとしての出発点となったポスター《海を返せ》。鉄条網ごしににらむ老漁民を描いた。
会場は6つの展示室で構成され、それぞれにテーマを掲げている。例えば、2章の「デザインになにができるか」では、代表作であるポスター作品《海を返せ》など、“民衆の声”を表現した粟津の作品を集められた。また、「複製のアウラ」と掲げた3章では、大規模国際展覧会サンパウロ・ビエンナーレに出品された《グラフィズム3部作》を展示。同作品は指紋や鳥、モナリザなど、「民衆のイコン」となるイメージを集めて制作したものだ。そしてフィナーレを飾る6章「すてたろう元年:民衆のイコン・秩父前衛派・韓国民衆版画」では子息であり、同企画監修者の粟津ケンが選出した、秩父の武甲山に関わる環境問題に焦点を当てた作品や韓国民主化運動と呼応した作家の民衆版画を粟津の作品とあわせて紹介している。

さらに、同展に合わせて〈金沢21世紀美術館〉が所蔵する約3000件の粟津のアーカイブ全件がホームページで公開された。一部の作品は、ホームページから画像データを自由にダウンロードできるのも新たな試みだ。

日本のデザインシーンを引率してきた粟津潔。社会を見つめ続けた彼の精神を振り返り、今日のデザインが社会にどう関わっていけるのかを考えたい。

『粟津潔 デザインになにができるか』

〈金沢21世紀美術館〉石川県金沢市広坂1-2-1 〜9月23日10時〜17時。月曜、7月15日、9月17日休(7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館)。TEL076 220 2800。入場無料。