CULTURE
TOWA TEIが提唱する、スポークンテクノとは。
『カーサ ブルータス』2018年9月号より
August 12, 2018 | Culture | a wall newspaper | photo_Naoto Date text_Katsumi Watanabe
バカリズム&砂原良徳と、16年ぶりに幻のユニットを再始動。夏帆や麻生久美子、吉岡里帆らをゲストに、新ジャンルを開拓。
Q Sweet Robots Against The Machine(以下、SRATM)名義では16年ぶりの新作ですね。制作経緯を教えてください。
バカリズムさんとは、彼の『オールナイトニッポン』のエンディングテーマを僕が作ったり、ドラマ版『架空OL日記』のオープニングで「Love Forever」を使ってもらったりして、なにかと縁があった。メールで直接やりとりをするようになってから、何か一緒に作ろうと話をしていたんです。昨年、吉岡里帆さんの詩の朗読に、僕が曲をつけるというラジオの企画があり、その直後に、砂原良徳さんと会った時、その企画のことを話して。スポークンワードに、テクノのトラックをつけるという作品は、今までなかったと気づいたんですよね。それで改めて、バカリズムさんに相談したところ、のってきてくれました。SRATMは、ソロ活動を始めた直後、TOWA TEI名義のイメージと異なる楽曲を発表する変名で、その役割を終えたと考えていたんですが、企画の拡張性を考えるとピッタリだと思って復活させたんです。
Q テイさんとバカリさんが作品を発表すると聞き、YMOなどの音楽、伊武雅刀や小林克也らのコントを収録した「スネークマンショー」を思い出しましたが。
「スネークマン」は素敵な音楽とギャグが交互に収録されていましたが、SRATMは楽曲の上にスポークンワードをのせたものなので、全然違うものですね。ギャグというよりも、ジャンルとしてはスポークンワードやポエトリーリーディングという意識で作りました。その後、砂原さんと話している時に、スポークンテクノという言葉を思いつきましたね。
Q 確かに、バカリさんと麻生久美子さんのデュエット「捨てられない街角」以外、メロディを全面的に配した楽曲はありませんね。
いろいろなレコードを買ってきましたけど、昔からスポークンワードのレコードが好きで。僕が音楽制作を始めたごく初期 Deee-Lite「What is Love?」(90年)とい
う曲で、ビートニクの系譜にいてデトロイトでラジオDJしていたトム・クレイの言葉をサンプリングしているんですよ。自分はボーカリストじゃないせいか、声に興味があって、ひとつの音色として見ていると思う。歌は大体、西洋起源の12音階のグリッドに収まっているかどうかで、優劣を判断する。でも、声は人によって違うし、スポークンワードは言葉を置くタイミング、間、音程や強弱だったり。レコードに落とし込む点では一緒ですが、従来の歌ものとスポークンテクノでは、シンクロと水球くらいの違いがあると思う。我ながらリファレンスのない音楽を作っちゃったなと自負しています。
Q SRATM名義だけに男女の会話は、人間とAIのやりとりを意識しているのかと思いましたが。
確かに、完全に話がズレながら会話が進む「ダキタイム」など、AIと人間のやりとりに聴こえるかも。人工知能は、やっぱりビッグデータでしかないから、人間の情緒まで察知できないと思う。例えば、「非常識クイズ」で展開される、質問と答えのやりとりとか、あそこまで気の利いた答えができて、初めてAIが人間に近づいたと言えると思うんですよね。
バカリズムさんとは、彼の『オールナイトニッポン』のエンディングテーマを僕が作ったり、ドラマ版『架空OL日記』のオープニングで「Love Forever」を使ってもらったりして、なにかと縁があった。メールで直接やりとりをするようになってから、何か一緒に作ろうと話をしていたんです。昨年、吉岡里帆さんの詩の朗読に、僕が曲をつけるというラジオの企画があり、その直後に、砂原良徳さんと会った時、その企画のことを話して。スポークンワードに、テクノのトラックをつけるという作品は、今までなかったと気づいたんですよね。それで改めて、バカリズムさんに相談したところ、のってきてくれました。SRATMは、ソロ活動を始めた直後、TOWA TEI名義のイメージと異なる楽曲を発表する変名で、その役割を終えたと考えていたんですが、企画の拡張性を考えるとピッタリだと思って復活させたんです。
Q テイさんとバカリさんが作品を発表すると聞き、YMOなどの音楽、伊武雅刀や小林克也らのコントを収録した「スネークマンショー」を思い出しましたが。
「スネークマン」は素敵な音楽とギャグが交互に収録されていましたが、SRATMは楽曲の上にスポークンワードをのせたものなので、全然違うものですね。ギャグというよりも、ジャンルとしてはスポークンワードやポエトリーリーディングという意識で作りました。その後、砂原さんと話している時に、スポークンテクノという言葉を思いつきましたね。
Q 確かに、バカリさんと麻生久美子さんのデュエット「捨てられない街角」以外、メロディを全面的に配した楽曲はありませんね。
いろいろなレコードを買ってきましたけど、昔からスポークンワードのレコードが好きで。僕が音楽制作を始めたごく初期 Deee-Lite「What is Love?」(90年)とい
う曲で、ビートニクの系譜にいてデトロイトでラジオDJしていたトム・クレイの言葉をサンプリングしているんですよ。自分はボーカリストじゃないせいか、声に興味があって、ひとつの音色として見ていると思う。歌は大体、西洋起源の12音階のグリッドに収まっているかどうかで、優劣を判断する。でも、声は人によって違うし、スポークンワードは言葉を置くタイミング、間、音程や強弱だったり。レコードに落とし込む点では一緒ですが、従来の歌ものとスポークンテクノでは、シンクロと水球くらいの違いがあると思う。我ながらリファレンスのない音楽を作っちゃったなと自負しています。
Q SRATM名義だけに男女の会話は、人間とAIのやりとりを意識しているのかと思いましたが。
確かに、完全に話がズレながら会話が進む「ダキタイム」など、AIと人間のやりとりに聴こえるかも。人工知能は、やっぱりビッグデータでしかないから、人間の情緒まで察知できないと思う。例えば、「非常識クイズ」で展開される、質問と答えのやりとりとか、あそこまで気の利いた答えができて、初めてAIが人間に近づいたと言えると思うんですよね。
テイ・トウワ
1990年にDeee-Liteのメンバーとしてデビュー。94年から拠点を日本に移し、最新作『EMO』(2017年)を含む9枚のソロ作を発表、プロデュースや楽曲提供も行う。バカリズムと砂原良徳を迎え、16年ぶりにSweet Robots Against The Machine名義の新作『3(さん)』を発表。