小林エリカが紡ぐ、目に見えない光の歴史。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

小林エリカが紡ぐ、目に見えない光の歴史。

『カーサ ブルータス』2018年1月号より

100年前の史実をつなげ、今を読み解き、未来を考える。作家・小林エリカが軽井沢の美術館で個展を開いています。

小林エリカ
こばやしえりか 1978年東京生まれ。2014年、小説『マダム・キュリーと朝食を』で、第27回三島賞・第151回芥川賞にノミネート。著書に『彼女は鏡の中を覗きこむ』『親愛なるキティーたちへ』『光の子ども1.2』『忘れられないの』などがある。
漫画、小説、インスタレーション。多彩な表現手段で、放射能や戦争という壮大なテーマに立ち向かう小林エリカ。待望の美術館初個展が〈軽井沢ニューアートミュージアム〉で開催されている。

ー「トリニティ」はキリスト教の言葉ですね?
小林 三位一体、「父と子と精霊」を意味します。と同時に、アメリカのニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル実験場にある、世界で初めて原爆実験が行われた場所の名前でもあるんです。当時マンハッタン計画という名で原子爆弾開発がアメリカで行われていて、そこで初めての爆弾が爆発した。その場所がなぜトリニティと名づけられたかは定かではなくて、インディアンの魔の山の名前に由来していたから、とか原爆が3つ(トリニティのそれと、広島のリトルボーイ、長崎のファットマン)用意されていたからではないか、という説があるようです。マンハッタン計画を率いていたロバート・オッペンハイマーという人がトリニティと名づけるときに、頭の中にはジョン・ダンという詩人の書いた一編の詩があった、ということがわかって。そのジョン・ダンの詩を再解釈するところから展覧会を作っていきました。
ウランガラスによる新作のインスタレーションや映像、ドローイング、写真、文章などを組み合わせ、立体的に構成。展示を巡ると一冊の本を読んだような体験ができる。
ージョン・ダンとオッペンハイマーは交流があったのですか?
小林 ジョン・ダンはイギリス人でシェイクスピアの時代の人なので……。本を通して出会ったのでしょうか。トリニティに至るまでの放射能の旅と、トリニティに至ってからの歴史を読み解く展覧会にしたい。蛍光緑に光るウランガラスで作った彫刻もあって、ぱっと見キラキラしていますが、じっくり読んでいくこともできる。

ーエリカさんはあちらの史実とこちらの史実を軽やかに接続させて作品を作りますね。昔から歴史が好きだったのですか?
小林 私は時間や家族、歴史といわれているものなど「目に見えないもの」にすごく興味があります。時間を越えて残り続けるもの。目に見えないのに確実に存在し続ける何か。大事なのは、善悪だけで世の中が動いているのではないと知ること。歴史はすごく簡単に覆されることを自覚することです。

ーアーティストとして独特な手法で表現されていると思います。
小林 不思議だと思うことを、まずは先人たちの研究から探していきます。あちらの研究とこちらの研究を今現在に読みつなげる、私のような人がいてもいい。漫画と小説とインスタレーション、それが私のトリニティ。これで立ち向かうぞ! という気持ちなんです。

『トリニティ』

〜2018年1月14日。新作のインスタレーションも発表。

〈軽井沢ニューアートミュージアム〉

長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1151-5
TEL 0267 46 8691。10時〜17時。火曜休。入場無料。

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