CULTURE
村上春樹さんの音のいい部屋を訪ねました。【外伝】レコードディガーとしての村上春樹。
December 14, 2017 | Culture | casabrutus.com | photo_Yasutomo Ebisu text_Kunichi Nomura
Casa BRUTUS特別編集ムック「音のいい部屋。」で村上春樹さんの音のいい部屋にお邪魔しました。壁一面レコードに囲まれた自宅の書斎で、レコードへの思いをたっぷり語ってもらいましたが、紙幅の都合でどうしても掲載できななかったのがレコードディガーとしての村上さん。世界中のレコード屋をまわって、いまもレコードを掘り続けているコレクターとしてのエピソードを外伝として特別に公開します! 文/野村訓市
『羊をめぐる冒険』に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、『ノルウェイの森』や『ねじまき鳥クロニクル』といった小説。『本当の戦争の話をしよう』といった翻訳もの。90年代、まだ自分が若いころに旅先の浜辺で、空港でと何度も読んだ村上春樹さんの小説には深い思い入れがあるが、それとは違う印象で心に残ったのが、村上さんが海外暮らしをしていた時のことが書かれているエッセイ『遠い太鼓』。普段小説で目にする村上さんの文体とは違い、目の前の光景を面白がり、どこか高揚した雰囲気で描かれる日常の場面に、海外で暮らしていた時の自分の経験と照らし合わせ、「ウンウン、アルアル」と何度も深く頷いたものだった。『音のいい部屋。』の特集を1冊にまとめ、ムックとして出版する際に、ダメ元で村上さんに取材を申し込むと、うれしいことに受けていただいた。世界的作家に取材をするということは、すなわち自分が文章にし、それを作家本人にチェックしてもらうことを意味する。そのことに気づいたのは、取材日が確定した後のことだった。普段、あまり緊張することがない自分でも、思わず早口になりそうなほど硬くなった取材でしたが、気づけば1時間を予定していたものが3時間近くも、たくさん話していただき、それは楽しいものだった。本題からそれ、レコードをどのように買うかのくだりは、現場にいたスタッフから何度も笑いが漏れるほど。それはかつて『遠い太鼓』を読んだ時に感じた、村上さん本人の感情と愛情に溢れた会話。紙幅の都合もあり泣く泣くカットした部分を今回、外伝としてwebに掲載することを承諾していただき、みなさんに紹介することができることになった。
世界的作家だ! というこちらのイメージが、失礼ながらだんだん“ひょっとして本業は別なのではないか? 本当はレコードハンターなのではないか?”という疑惑に変わっていった3時間あまり。レコード好きの人だけでなく、何かを集める癖があるというコレクター魂のある人にとっては、深い同意の頷きしかない今回の話。村上さんのリスニングルームと化している書斎のソファに、座って自身が話をうかがっていると想像して読んでみてください。
世界的作家だ! というこちらのイメージが、失礼ながらだんだん“ひょっとして本業は別なのではないか? 本当はレコードハンターなのではないか?”という疑惑に変わっていった3時間あまり。レコード好きの人だけでなく、何かを集める癖があるというコレクター魂のある人にとっては、深い同意の頷きしかない今回の話。村上さんのリスニングルームと化している書斎のソファに、座って自身が話をうかがっていると想像して読んでみてください。
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