CULTURE
藤田嗣治の半生を描く映画を中谷美紀が語る。
November 24, 2015 | Culture, Art | a wall newspaper | text_Wakako Miyake editor_Wakako Miyake
フランスで最も名が知られた日本人画家、藤田嗣治。日本とパリの間で居場所を探し続けた画家の姿を描く。
レオナール・フジタの洗礼名でも知られる画家・藤田嗣治の戦前のパリと戦時中の日本での生活を描いた映画『FOUJITA』が全国で公開中だ。5番目の妻、君代夫人を演じた中谷美紀さんが、藤田と、映画の見どころについて語った。
「実は藤田は正直、それほど好きな作家ではなかったのですが、晩年を過ごしたアトリエ〈メゾン=アトリエ・フジタ〉を訪ねたり、シャンパーニュ地方にある教会〈シャペル・フジタ〉を見て回るうちに印象が変わりました。ただ西洋にかぶれた人ではなく、郷愁みたいなものを持ち続けた人なのではないかな、と思いました。自分のルーツを探しても探しても探し切れなかったような」
「実は藤田は正直、それほど好きな作家ではなかったのですが、晩年を過ごしたアトリエ〈メゾン=アトリエ・フジタ〉を訪ねたり、シャンパーニュ地方にある教会〈シャペル・フジタ〉を見て回るうちに印象が変わりました。ただ西洋にかぶれた人ではなく、郷愁みたいなものを持ち続けた人なのではないかな、と思いました。自分のルーツを探しても探しても探し切れなかったような」
それは面相筆(*1)で輪郭を描く手法にも表れていたのでは、と中谷さんは言う。また、李禹煥の作品をはじめ、余白のある絵が好きだという彼女が、最も惹かれた藤田の絵は、乳白色の肌(*2)の女性が仰臥しているもの。
「タイトルを忘れてしまったのですが、真っ白さが美しいと感激しました。ただ、李禹煥さんいわく、藤田の真骨頂は乳白色やアンファンシリーズ(*3)ではなく戦争画(*4)にあるそう。技術力の高さやモノを見抜く力のすごさがわかるとおっしゃっていました」
今回、その戦争画を描いていたころの藤田と過ごす君代夫人を演じたが、「天才の藤田に対して自分は何も持っていないという空虚感というか、もどかしさを大切に演じたいと思いました」と言う。
これまで見たことのない藤田を感じるエピソードはもちろん、美しい映像にも引き込まれる映画だ。
「タイトルを忘れてしまったのですが、真っ白さが美しいと感激しました。ただ、李禹煥さんいわく、藤田の真骨頂は乳白色やアンファンシリーズ(*3)ではなく戦争画(*4)にあるそう。技術力の高さやモノを見抜く力のすごさがわかるとおっしゃっていました」
今回、その戦争画を描いていたころの藤田と過ごす君代夫人を演じたが、「天才の藤田に対して自分は何も持っていないという空虚感というか、もどかしさを大切に演じたいと思いました」と言う。
これまで見たことのない藤田を感じるエピソードはもちろん、美しい映像にも引き込まれる映画だ。
*1 穂先が極めて細い日本画用の絵筆。これで輪郭線を描くことで乳白色の肌を一層際立たせた。墨で描いていたもよう。 *2 1920年代のパリで、白い下地が「乳白色の肌」と絶賛され、一夜にして名声を獲得。乳白色にはタルクが使用されたよう。 *3 第2次世界大戦後、子供を主題とした絵画を多く描いた。 *4 戦時中は他の戦争画家を主導。後に戦争賛美との誹謗を受け、国を追われるようにパリへと渡り、フランス国籍を取得。
中谷美紀
なかたにみき 女優。好きな絵は、俵屋宗達や長谷川等伯の《松林図屏風》といった日本画のほか、現代美術家・李禹煥の作品など。2016年4月上旬よりパルコ劇場にて舞台『猟銃』に出演。
『FOUJITA』
角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国で上映中。主演:オダギリジョー、監督・脚本:小栗康平。陰影や緻密な構図にこだわる映像美に嘆息する。公式サイト
©2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション