VEHICLE
Chill CARS|パーソナルなサイズ感が好ましい、スポーツセダン。
『カーサ ブルータス』2018年9月号より
August 15, 2018 | Vehicle | Chill CARS | photo_Futoshi Osako text_Fumio Ogawa illustration_Daijiro Ohara
〈BMW〉が1975年に発表した《3シリーズ》。5回のモデルチェンジを経て現在に至っているほど、長命なシリーズだ。人気の理由は、適度なサイズ感とスポーティな操縦性能、そして高品質感だろう。
ここで取り上げる初代は多くの面で画期的なモデルだった。
ひとつはスタイリングだ。車体側面を前後に走るプレスライン。流れるようなスピード感を表現するとともに、歪みのない線で工作精度の高さを強調している。フロントに着目すると、グリル面から飛び出すような角度で配置されたヘッドランプが、力強く、かつ凝った造型美を感じさせる。
もうひとつは、2ドアボディのみの設定。72年発表の4ドアセダン《5シリーズ》との差別化のためだが、2ドアゆえのパーソナル感が好ましい。
そして忘れてならないのは、この時の〈BMW〉車は欧州の階級社会と無縁だったことだ。航空機エンジンメーカーとして生まれ、戦後小さなクルマ作りから再スタートしたメーカーだけに、支配階級の高級車、庶民の小型車といった分類とは違う、運転を楽しみたい人のためのスポーツセダンという独自の立ち位置を模索して成功した。クルマの「上質」とは、稀少なシート素材でなく、走りを指すのだと消費者に理解させたのだ。欧州のモダンデザインとは、階級社会からの決別手段だったと言われる。《3シリーズ》はまさにその具体例。潔さが気持ち良い、思想あるプロダクトである。
ひとつはスタイリングだ。車体側面を前後に走るプレスライン。流れるようなスピード感を表現するとともに、歪みのない線で工作精度の高さを強調している。フロントに着目すると、グリル面から飛び出すような角度で配置されたヘッドランプが、力強く、かつ凝った造型美を感じさせる。
もうひとつは、2ドアボディのみの設定。72年発表の4ドアセダン《5シリーズ》との差別化のためだが、2ドアゆえのパーソナル感が好ましい。
そして忘れてならないのは、この時の〈BMW〉車は欧州の階級社会と無縁だったことだ。航空機エンジンメーカーとして生まれ、戦後小さなクルマ作りから再スタートしたメーカーだけに、支配階級の高級車、庶民の小型車といった分類とは違う、運転を楽しみたい人のためのスポーツセダンという独自の立ち位置を模索して成功した。クルマの「上質」とは、稀少なシート素材でなく、走りを指すのだと消費者に理解させたのだ。欧州のモダンデザインとは、階級社会からの決別手段だったと言われる。《3シリーズ》はまさにその具体例。潔さが気持ち良い、思想あるプロダクトである。