FOOD
小寺慶子のレストラン予報|代々木上原〈茂幸〉
『カーサ ブルータス』2020年7・8月合併号より
| Food | RESTAURANT FORECAST | photo_Yuichiro Kikuchi text_Keiko Kodera
旬を愛でる日本料理に心が満たされるでしょう。
日本料理には旬味を合わせる “出会いもの” という言葉があるが、季節の食材の組み合わせはもちろん、美しい器と料理の “出会い” を楽しませてくれるのが今春オープンした〈茂幸〉だ。
〈祇園 丸山〉、〈麻布 幸村〉で日本料理に向き合う姿勢や知識、技術を磨いてきた菅野茂男さん。日々の鍛練やたしかな審美眼を感じさせる料理には絶対的な安定感があるが、器使いも含めて旬やストーリー性を盛り込んだコースには食べ手の心を惹きこむパワーがある。
たとえば見事な梅が描かれた輪島塗の大椀に盛りつけられたいちご煮の素麺は、器に合わせて初夏の料理を考えていたときにひらめいたという逸品。鮑とカツオ、それぞれを合わせた出汁と鮑のペースト、雲丹と梅素麺を混ぜて食べると口のなかにおだやかな旨みとやさしい酸味が一体となって広がる。丸十を添えた若鮎の塩焼きや花山椒のタルタルで食べる海老フライなど、季節ごとのお楽しみも続々。格式主義の逆をいく懐の深い日本料理店もまた、心ときめく “出会いもの” だ。
〈祇園 丸山〉、〈麻布 幸村〉で日本料理に向き合う姿勢や知識、技術を磨いてきた菅野茂男さん。日々の鍛練やたしかな審美眼を感じさせる料理には絶対的な安定感があるが、器使いも含めて旬やストーリー性を盛り込んだコースには食べ手の心を惹きこむパワーがある。
たとえば見事な梅が描かれた輪島塗の大椀に盛りつけられたいちご煮の素麺は、器に合わせて初夏の料理を考えていたときにひらめいたという逸品。鮑とカツオ、それぞれを合わせた出汁と鮑のペースト、雲丹と梅素麺を混ぜて食べると口のなかにおだやかな旨みとやさしい酸味が一体となって広がる。丸十を添えた若鮎の塩焼きや花山椒のタルタルで食べる海老フライなど、季節ごとのお楽しみも続々。格式主義の逆をいく懐の深い日本料理店もまた、心ときめく “出会いもの” だ。

小寺慶子
こでらけいこ 肉を糧に生きる肉食系ライターとして雑誌やWebに執筆。今号のスイーツ特集では、本格的な夏に先駆けてかき氷三昧。順調に水(蜜!?)太り中。
