
FASHION
長坂常がT-HOUSE New Balanceに遺した〈まかない家具〉と仮設空間とは?
February 21, 2023 | Fashion, Architecture, Culture, Design | PR | photo_Kohei Omachi text_Yoshinao Yamada
建築家の長坂常による〈まかない家具〉と、その制作のために作られた仮説空間が〈T-HOUSE New Balance〉でインスタレーション〈まかない家具展〉として2月28日まで開催されている。ミラノデザインウィークを控える長坂に、インスタレーションの企みを聞いた。
〈まかない家具〉は人を意識せず、機能を重視した素っ気なさが魅力。
建築家、スキーマ建築計画の長坂常が〈T-HOUSE New Balance〉でインスタレーション〈まかない家具展〉を開催している。そもそも〈まかない家具〉とはなにか。長坂はかねてから、大工が工事現場で手間もかけずに一時的に必要な家具を作ることに注目してきた。彼らは建材の端材といったあり合わせの材料で、作業台や道具をかけるための収納などを器用に作ってしまう。その家具は人に見せることを意識せず、あくまで機能を重視した素っ気なさを備えたもの。そこに魅力を感じた長坂は、料理店のまかない料理のようなあり方から〈まかない家具〉と呼んでいる。
この名は、築122年の蔵を移築した木造の構造体を入れ子状態で再構築した〈T-HOUSE New Balance〉で工事監理するなかでつけられた。大工が柱の貫(ぬき・日本の木造工法で柱の安定を図るため横に通す材)を利用し、即席の掃除用具置き場を作っていた。この姿に着想を得て、長坂はハンガーラックや照明などを設置。それまでも漠然と注目していた行為を、ここで明確に意識することになった。この考えは後の長坂の建築や家具づくりにもつながっている。
この名は、築122年の蔵を移築した木造の構造体を入れ子状態で再構築した〈T-HOUSE New Balance〉で工事監理するなかでつけられた。大工が柱の貫(ぬき・日本の木造工法で柱の安定を図るため横に通す材)を利用し、即席の掃除用具置き場を作っていた。この姿に着想を得て、長坂はハンガーラックや照明などを設置。それまでも漠然と注目していた行為を、ここで明確に意識することになった。この考えは後の長坂の建築や家具づくりにもつながっている。
制作現場が〈T-HOUSE New Balance〉のインスタレーションに。
本展は、〈T-HOUSE New Balance〉のディレクターのモリタニシュウゴが〈まかない家具〉を展示してほしいというリクエストから始まった。しかし〈まかない家具〉は、制作を伴わなければ必然性がない。そこで長坂は11日間にわたって、今年のミラノデザインウィークに出展する家具什器の制作を〈T-HOUSE New Balance〉で行った。その間、通常営業を休んだ〈T-HOUSE New Balance〉は製作アトリエとして機能。制作過程で必要な〈まかない家具〉が残され、アトリエ跡が期間限定でストアの内装となって活かされている。
面白いことに〈まかない家具〉は、「どこの国の現場でも見ることができる」ものだと長坂はいう。国によって材料は変わり、あらわれ方も異なる。今回〈T-HOUSE New Balance〉の空間を覆い尽くす青い養生シートは現場を保護するシート材だが、これも日本特有の素材。〈T-HOUSE New Balance〉の二階がアトリエとなっていることから、木くずなどの飛散を抑えるために一階部分をしっかりと囲う必要があった。吹き抜けもあるため、長坂は、建物内部で巨大なバルーンを膨らませたインスタレーション作品で知られるスペイン・バルセロナ生まれのアーティスト集団〈Penique productions〉の作品にヒントを得て、バルーン状に空間を覆い尽くすことにした。
この考えを援用し、フィッティングルームはストアのために制作。空間そのものや照明器具などは送風することでバルーン形状を保っているが、フィッティングもまた同じ仕組みで膨らみを保つ。建築関係者には見慣れた養生シートだが、一般にそれに覆われた空間を見ることは少ないだろう。長坂らしい制作プロセスをも取り込んだユニークな空間を、貴重なこの機会にぜひ体験してほしい。
面白いことに〈まかない家具〉は、「どこの国の現場でも見ることができる」ものだと長坂はいう。国によって材料は変わり、あらわれ方も異なる。今回〈T-HOUSE New Balance〉の空間を覆い尽くす青い養生シートは現場を保護するシート材だが、これも日本特有の素材。〈T-HOUSE New Balance〉の二階がアトリエとなっていることから、木くずなどの飛散を抑えるために一階部分をしっかりと囲う必要があった。吹き抜けもあるため、長坂は、建物内部で巨大なバルーンを膨らませたインスタレーション作品で知られるスペイン・バルセロナ生まれのアーティスト集団〈Penique productions〉の作品にヒントを得て、バルーン状に空間を覆い尽くすことにした。
この考えを援用し、フィッティングルームはストアのために制作。空間そのものや照明器具などは送風することでバルーン形状を保っているが、フィッティングもまた同じ仕組みで膨らみを保つ。建築関係者には見慣れた養生シートだが、一般にそれに覆われた空間を見ることは少ないだろう。長坂らしい制作プロセスをも取り込んだユニークな空間を、貴重なこの機会にぜひ体験してほしい。
T-HOUSE New Balance
東京都中央区日本橋浜町3-9-2。TEL 03 6231 1991。11時〜14時、15時〜19時(月・火曜)11時〜19時(金〜日曜)。水・木曜休。『T-HOUSE New Balance invites Jo Nagasaka Schemata Architects “まかない家具展”』は〜2023年2月28日。最新の商品情報や展示企画などは随時〈T-HOUSE New Balance〉のインスタグラム(@newbalance_t_house)にて配信される。
