FASHION
イッセイ ミヤケの〈A-POC〉が〈A-POC ABLE ISSEY MIYAKE〉として新たにスタート!
March 10, 2021 | Fashion, Design | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
イッセイ ミヤケによるブランド〈A-POC〉が2007年に、同社の他ブランドで応用されるようになってから10年あまり。その〈A-POC〉がパワーアップして新しいスタートを切ります。デザイナー、宮前義之が手がける新ブランド〈A-POC ABLE ISSEY MIYAKE〉の誕生です。
2021年3月13日に新ブランド〈A-POC ABLE ISSEY MIYAKE〉が始動する。開発・デザインにあたるのは、8年間にわたってイッセイ ミヤケのデザイナーを務めていた宮前義之が率いるチーム。〈A-POC〉は単独のブランドとしては2007年に終了し、イッセイ ミヤケの各ブランドに〈A-POC INSIDE〉という形で存続してきた。その〈A-POC〉がさらなる発展形を提案するブランドとして新たにデビューする。
かつて〈A-POC〉では、着る人が好きなところで裁断し、自分でデザインできる服を発表し、大きな話題を呼んだ。これは業界用語で言うところの「川上から川下まで」すべての工程にイッセイ ミヤケが密接に関わっていることから可能になったものだ。通常の服づくりでは、糸を撚り、その糸を織るまたは編むなどして布を作り、デザイナーがデザインし、パタンナーが型紙を起こすといったプロセスが分業化されている。この工程を一本化することでこれまでにない機能を持つ服ができあがる。
かつて〈A-POC〉では、着る人が好きなところで裁断し、自分でデザインできる服を発表し、大きな話題を呼んだ。これは業界用語で言うところの「川上から川下まで」すべての工程にイッセイ ミヤケが密接に関わっていることから可能になったものだ。通常の服づくりでは、糸を撚り、その糸を織るまたは編むなどして布を作り、デザイナーがデザインし、パタンナーが型紙を起こすといったプロセスが分業化されている。この工程を一本化することでこれまでにない機能を持つ服ができあがる。
その成果の一つが〈A-POC〉の考え方を用い、2014年に宮前義之が発表した〈スチーム ストレッチ〉という製法だった。高温の蒸気を当てることで布を縮め、独自のストレッチ素材を生み出したのだ。これは、一枚の紙から複数の鶴を折るといった日本の折り紙にヒントを得ている。熱処理によって縮む糸を織り込むことで布に折り目がつけられる。糸の一部だけに収縮加工を施すことで、山と谷の折り目を曲線にすることも、直交させることもできる。従来のプリーツとは異なる複雑な模様を表現することも可能だ。〈スチーム ストレッチ〉シリーズでは糸の収縮率や、糸のどの部分に収縮加工を施すかなどによって、折り目の位置や深さなど最終的な形が決まる。分業ではこういった細かい計算をすることは難しい。
〈A-POC ABLE ISSEY MIYAKE〉が提案する新シリーズ〈TYPE-O〉は、このスチーム ストレッチ製法の技術を使い、立体的な幾何学模様を配したもの。一枚の布から、大きめの四角を主とした模様と細かい三角形を組み合わせた模様が作り出されている。小さな三角形の模様は主に身頃の両脇など、布を縫い合わせるところに配置されている。縫製がしやすく、着心地もよくなる工夫だ。さらに〈TYPE-O〉では、一部に植物由来のポリエステルを使用している。今後も捨てられていた材料を活用するなど、引き続き素材の探究に取り組む予定だ。
4月に展開されるもう一つのシリーズ〈TYPE-U〉は”形状記憶テキスタイル”とでも言うべきもの。こちらは糸に、通常行われる熱処理をせずに布を織ることによって、手でつけた自然なしわや折り目をキープできる。しわを伸ばしておけば、それもそのまま記憶する。ロールアップした袖口が落ちてくることもない。着る人の手や体が服の最終的な形を決め、デザインのプロセスに携わることができる。
4月に展開されるもう一つのシリーズ〈TYPE-U〉は”形状記憶テキスタイル”とでも言うべきもの。こちらは糸に、通常行われる熱処理をせずに布を織ることによって、手でつけた自然なしわや折り目をキープできる。しわを伸ばしておけば、それもそのまま記憶する。ロールアップした袖口が落ちてくることもない。着る人の手や体が服の最終的な形を決め、デザインのプロセスに携わることができる。
〈A-POC ABLE ISSEY MIYAKE〉はメンズ・ウィメンズの別はなく、好きなサイズを着ることができる。また、〈A-POC ABLE ISSEY MIYAKE〉はシーズンにとらわれず、随時ベーシックアイテムをアップデートしながら、新しいプロジェクトやシリーズの発信をしていく予定だ。今後は、昨年10月に発表した横尾忠則とのコラボレーション〈TADANORI YOKOO ISSEY MIYAKE〉の新アイテムのほか、クラフトやテクノロジーなど異業種、異分野とのコラボレーションも企画されている。
イッセイ ミヤケが標榜する「一枚の布」には、糸や布を作る工場、そしてコラボレーションするアーティストたちとの密なコミュニケーションが欠かせない。こうしてさまざまなテクノロジーや思いが詰まった「一枚の布」から生まれる服を完成させるのは着る人であり、その完成形は無限だ。〈A-POC ABLE ISSEY MIYAKE〉の「ABLE」(現実化)という語にはそんな意志が感じられる。
イッセイ ミヤケが標榜する「一枚の布」には、糸や布を作る工場、そしてコラボレーションするアーティストたちとの密なコミュニケーションが欠かせない。こうしてさまざまなテクノロジーや思いが詰まった「一枚の布」から生まれる服を完成させるのは着る人であり、その完成形は無限だ。〈A-POC ABLE ISSEY MIYAKE〉の「ABLE」(現実化)という語にはそんな意志が感じられる。
〈A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / AOYAMA〉
3月13日よりオープン。都港区南青山5-3-10 FROM-1stビル。12時〜19時。※新型コロナウイルス感染拡大防止のため営業時間短縮 (通常は11時〜20時)。 TEL 03 3499 6476。同日、〈ISSEY MIYAKE ONLINE STORE 〉でも一部アイテムの取り扱いを開始。