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カルティエ展に見る、マジシャンが創造したミステリアスな時計|鈴木芳雄「本と展覧会」
November 28, 2019 | Fashion, Art, Culture, Design | casabrutus.com | text_Yoshio Suzuki editor_Keiko Kusano
カルティエがそのお宝を美術館などの展示施設でお披露目する展覧会が現在、東京・六本木の〈国立新美術館〉で開催されている。その第1回目は1989年の〈パリ市立プティ・パレ美術館〉で、今回でなんと35回目だそう。日本では、2009年の〈東京国立博物館 表慶館〉での開催以来、10年ぶりとなる貴重な機会だ。
これまでのカルティエの展覧会は、カルティエがメゾンの歴史と創作の記録のために収集した、過去に制作されたピース(=カルティエ コレクション)をさまざまにキュレーションして展示するものだった。2004年の〈醍醐寺〉では、ゲストキュレーターにエットーレ・ソットサスを迎えたり、2009年の〈東京国立博物館〉では吉岡徳仁がそれぞれのジュエリーとそれにまつわるエピソードを映像で重ね合わせて見せるという、つねに画期的な展示を行ってきた。
今回は個人蔵の作品を集め、カルティエ所蔵のコレクションとともに展示するという、またこれもチャレンジングなものだ。それによって、1970年代以降の作品も多く登場。伝説的な名品とそのDNAを受け継ぐ近年作を比較で見せることも可能に。たとえばパンテールをモティーフにした作品は100年の時を超え、ひとつの大きなケースに収められている。
本展は、会場構成を杉本博司と榊田倫之が主宰する建築設計事務所「新素材研究所」が手がけたことでも大いに話題になっている。屋久杉、春日杉、神代杉、神代欅などの貴重な木材、さらに大谷石をふんだんに使用した展示構成は、他のメゾンの追随を許さないものとなった。ネックレスを掛けて展示するトルソーは、日頃は仏像を彫っている仏師に依頼して作ってもらったものである。
会場を入ると、100年ほど前にイタリアで作られた塔時計が設置されていて驚く。聞けば、近年、杉本博司がスイスで見つけ、今回の展示のために修復したのだそう。しかもその修復では、なんと針が逆回転するように改造されたのだった。ここから、時を遡る旅に出かけようと誘われているのだ。
会場を入ると、100年ほど前にイタリアで作られた塔時計が設置されていて驚く。聞けば、近年、杉本博司がスイスで見つけ、今回の展示のために修復したのだそう。しかもその修復では、なんと針が逆回転するように改造されたのだった。ここから、時を遡る旅に出かけようと誘われているのだ。
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illustration Yoshifumi Takeda
鈴木芳雄
すずき よしお 編集者/美術ジャーナリスト。『ブルータス』副編集長時代から「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「若冲を見たか?」など美術特集を多く手がける。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』など。明治学院大学非常勤講師。
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