FASHION
「ドレス・コード」をめぐって繰り広げられる装いのゲーム。
| Fashion | casabrutus.com | text_Mariko Uramoto
「服を着る」という行為やファッションを通じて、人と社会の関係性を問いかける企画展『ドレス・コード?──着る人たちのゲーム』が8月9日より京都国立近代美術館でスタート。18、19世紀の歴史的な衣装から、グッチ、コム デ ギャルソン、ヴェトモンなど人気ブランドの最新スタイル、映画や漫画、アニメなどに登場するファッションも合わせて、装いにまつわるゲームを紹介する。
ファッションと一言でいっても、流行の服やスタイルだけを指すものではない。そこには、時代性や地域、社会階層の文化や慣習と結びついた服装全般も含まれており、人々の行動や思考にも影響を与える暗黙の「ドレス・コード」がある。今展ではそうしたルールをめぐって繰り広げられる実践、着る人/視る人との関係性やコミュニケーション、衣類を通じた人と社会のつながりについて問い直そうとする。
学校で制服を、職場でスーツを着る、というのはわかりやすい服装のルールだろう。組織の規定を守り、自身の属性を示す有効な手段である。一方で、そうしたコードは時に破られたり、置き換えられたり、別のコードが生まれることもある。たとえば、軍服として開発されたトレンチコートや労働着であったデニムなど、現在では従来の用途は失われ、ファッションアイテムの一つとなったものもある。また、自身をカラフルに色彩に染め上げた「異色肌ギャル」など、あえてコードを逸脱した個性的なファッションに身を包む人もいる。ファッションによって自分の思考や属性を表明することもあれば、コスプレのように別人格を演じることだってできる。着ることによって私たちは“何者か”になることができるのだ。
歴史や作品中の人物に扮して作品を発表し続ける森村泰昌、衣服が紡いできた時間や所有者の記憶を顕在化させる石内都など、現代美術家によるファッションを通じた表現方法にも注目。写真家ハンス・エイケルブームの《フォト・ノーツ》は、同じバンドTシャツを着た人、上下デニムに身を包んだ人など、多数のスナップ写真をアイテムごとにカテゴライズしたユニークな作品。撮影した場所も時間もバラバラでまったく関係のない人たちが、何かしらのつながりがあるように見える実験的な作品であり、大衆性と個性の意味を改めて考えさせられる。
また文学や演劇、映画やマンガなど創作の世界では、ファッションがキャラクターの性格や行動、感情などを表す重要な役割を果たす。今展では映画ポスターの展示をするほか、18世紀フランス革命の時代を描いたマンガ『イノサン』『イノサン Rouge』とのコラボレーションや、演劇カンパニー「マームとジプシー」、「チェルフィッシュ」によるインスタレーションを通して、服とキャラクターについても深く考察する。自らの装いを自由に発信できるようになり、ファッションとの関わり方も新しい局面を迎えている現在。ファッションとは何なのか。私たちは何のために服を着るのか。一人一人が考える機会になるはずだ。
『ドレス・コード?──着る人たちのゲーム』
〈京都国立近代美術館〉
京都府京都市左京区岡崎円勝寺町。8月9日〜10月14日。9時30分〜17時。(金・土は21時まで)。月曜休。ただし8月12日。9月16日、23日、10月14日は開館。翌火曜休館。一般1,300円。
