DESIGN
デンマークの感性から生まれた、レストラン〈INUA〉の椅子《JARI》。
| Design, Food | casabrutus.com | text_Takahiro Tsuchida editor_Keiko Kusano
デンマークのレストラン〈noma〉でシェフを務めたトーマス・フレベルを迎え、東京・飯田橋にオープンした話題店〈INUA〉。このレストランのための椅子《JARI》をデザインしたOEOスタジオのトーマス・リッケと、製作を担当したクルーガーブラザースのヨナス・クルーガーが、その背景にあるストーリーを語った。
デンマークのコペンハーゲンを拠点に活躍するOEOスタジオのトーマス・リッケは、数々の国際的なブランドとコラボレーションする一方、日本の伝統的なもの作りにも深い造詣をもつデザイナーだ。2018年6月、〈noma〉のレネ・レゼピの右腕としてメニュー開発を担っていたトーマス・フレベルをヘッドシェフに迎え、KADOKAWAが東京でレストラン〈INUA〉をオープンした時、インテリアデザイナーとしてリッケを起用したのは必然の選択だっただろう。日本の食材を使い、スカンジナビアの感性を生かして極上の一皿を創造する〈INUA〉のアプローチを、彼は空間へと見事に反映してみせた。
〈INUA〉のメインダイニングの家具は、インテリア全体の基調であるグレーで統一されている。このスペースの椅子は深澤直人がデザインした《HIROSHIMA》と《KAMUI》で、異なるメーカーの製品だが〈INUA〉のために同一のグレーで仕上げた。それらの椅子には、リッケがデザインした《JARI》テーブルがセットされている。
「《JARI》とは日本の玉砂利のことで、海辺で長い年月によって丸みを帯びた石にインスパイアされました。このテーブルの有機的なフォルムには正面がなく、どの位置に座っても違和感がありません」(トーマス・リッケ)
「《JARI》とは日本の玉砂利のことで、海辺で長い年月によって丸みを帯びた石にインスパイアされました。このテーブルの有機的なフォルムには正面がなく、どの位置に座っても違和感がありません」(トーマス・リッケ)
さらにリッケは、最大12人で使用できるプライベートダイニングルームのインテリアを特別に設えた。メインダイニングより全体の色のトーンを濃くして、いっそう寛げる雰囲気を作り出している。この空間のためにデザインされたのが椅子《JARI》(ジャリアームチェア)だ。
「このスペースで食事するゲストは、通常のダイニングよりも長時間にわたり椅子に座ることになります。だから座り心地をいっそう重視した、座面が広くゆったりできる椅子が求められました。日本人の体型を考慮して、サイズも検討を重ねました。《JARI》テーブルと共通する玉砂利のように優しい曲線は、快適性を高める効果があるのです」(トーマス・リッケ)
「このスペースで食事するゲストは、通常のダイニングよりも長時間にわたり椅子に座ることになります。だから座り心地をいっそう重視した、座面が広くゆったりできる椅子が求められました。日本人の体型を考慮して、サイズも検討を重ねました。《JARI》テーブルと共通する玉砂利のように優しい曲線は、快適性を高める効果があるのです」(トーマス・リッケ)
リッケがデザインの過程で重視したのが、デンマークのクラフツマンシップを最大限に取り入れること。デンマークデザインの黄金期とされる、1950年代から60年代にかけて生まれた木の椅子と通じる感覚が《JARI》アームチェアには備わっている。
「ただし、この椅子のデザインは懐古的なものではありません。木の塊から削り出したワンピースの背もたれの流れるようなフォルムや、全体のシンプルな構造は、コンテンポラリーさを心がけました。一方でデザインがトゥー・マッチにならないようにしています」(トーマス・リッケ)
「ただし、この椅子のデザインは懐古的なものではありません。木の塊から削り出したワンピースの背もたれの流れるようなフォルムや、全体のシンプルな構造は、コンテンポラリーさを心がけました。一方でデザインがトゥー・マッチにならないようにしています」(トーマス・リッケ)
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