DESIGN
ブルーノ・ムナーリの秘密を探ろう!|青野尚子の今週末見るべきアート
April 20, 2018 | Design, Architecture, Art | casabrutus.com | photo_Shin-ichi Yokoyama text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
絵本はよく知られているけれどグラフィック・デザイン、プロダクト・デザイン、建築、彫刻、テキスト、子供の造形教育と幅広く活動していたブルーノ・ムナーリ。彼の初期からの作品が見られる回顧展が〈神奈川県立近代美術館 葉山〉で開催中です。
2017年に生誕110年、今年で没後20年を迎えたブルーノ・ムナーリ。でも彼の作品は今も古びることはない。『ブルーノ・ムナーリ こどもの心をもちつづけるということ』は、いつまでもみずみずしい彼の世界を振り返る日本最大級の回顧展だ。
展示室に入ってまず目に入るのが「役に立たない機械」のシリーズ。円や細い角柱などのエレメントがモビールのように空中に浮かんでいる。わずかな風でゆらゆらと揺れる“機械”は動いてはいるけれど何かを作り出すわけではない。犬のように人間のために働くことはないけれど、気ままな動きで楽しませてくれる猫のよう。文字通り、何の役にも立たないところに意義がある。
次の展示室にはおなじみの絵本が。うち9冊の仕掛け絵本はもともとムナーリの一人息子、アルベルト・ムナーリのために作られたものだ。ムナーリは当時、子供のためにふさわしい絵本がないと感じ、自ら作ることにした。象は小鳥を、小鳥は魚を、魚はトカゲをうらやましがる『決して満足しない』は『ぞうのねがい』というタイトルで翻訳されたことがある。『トントン』はドアを開けると、どんどん小さな動物が出てくる。『ジージの帽子はどこにあるのかな』は洋服ダンスや戸棚を開けると中には意外なものが隠れている、という仕掛けだ。
その後、ムナーリは『闇の夜に』『きりのなかのサーカス』など代表作ともいえる絵本を世に送り出す。これらの絵本や『読めない本』『本に出あう前の本』などは大きさの違う紙が挟み込まれていたり、穴が開いていたり、半透明のトレーシングペーパーが重ねられているなど、立体的な仕掛けが施されている。一枚一枚のページに別の小さな空間への入り口が開いているようだ。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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