DESIGN
土田貴宏の東京デザインジャーナル|現在のデザインからの“椅子選び”
September 26, 2017 | Design | casabrutus.com | text_Takahiro Tsuchida illustration_ Yoshifumi Takeda
モダンデザインの歴史において、どんなアイテムよりも多彩で、時代の変化がはっきり表れているのが椅子。久しぶりに椅子を大特集した本誌9月号では、数々の歴史的なマスターピースをフィーチャーした。では現在、デザインされている椅子の新しい動向とは? 注目したい6脚を紹介します。
ミュラー・ヴァン・セーヴェレンは、モダンアートを思わせるミニマルさと色使いが話題を呼ぶベルギーの2人組デザイナー。昨年発表された寝椅子《wire s #》は、マットレスを折り曲げたような造形を、ステンレスのメッシュによって作り上げた。存在感は、ほとんどオブジェ。ただしロッキングすることで、緊張感がありながらもくつろぎをもたらす。当初、ある別荘のためにデザインされたもので、周囲の景色や建物が透けて見えるように、このデザインが発想されたという。
オランダの新鋭、クリスティン・メンデルツマによる《フラックス・チェア》。亜麻などの天然繊維のシートと、エコプラスチックのPLAのシートを何重にも重ね、熱を加えて3次元成形するパーツで全体を構成したサスティナブルな1脚だ。コンセプトはチャールズ&レイ・イームズが1940年代に手がけた成形合板の椅子に近いが、その21世紀版と言えそう。素材感を生かした、ストイックで無垢な佇まいがいい。2015年のミラノ・デザイン・ウィークで展示されて話題になり、昨年はダッチ・デザイン・アワードを受賞している。
アメリカのレオン・ランスマイアーは、ジャスパー・モリソンやコンスタンティン・グルチッチらと共通する、工業製品としての完成度と美しさを追求するタイプのデザイナー。彼の代表作であるスツール《リヴォルヴァー》は、ベアリングを採用したことでストレスのない座面の回転機構を実現している。ソリッドな外観は、あまり座り心地がよさそうに見えないものの、安定感やフットレストのバランスがよくハイスツールとしては十分に快適。インダストリアルなインテリアとの相性もいい。
Loading...
illustration Yoshifumi Takeda
土田貴宏
つちだ たかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。