DESIGN
土田貴宏の東京デザインジャーナル|エルメスのウィンドウを飾る、道具のスペクトル
| Design, Fashion | casabrutus.com | photo_Satoshi Asakawa / Courtesy of Hermès Japon text_Takahiro Tsuchida
マイク・エーブルソンが手がけた銀座メゾンエルメスのショーウィンドウ「ツール・ルーツ」は、古今東西の多様な道具をユニークな視点で分類。〈エルメス〉のアイテムも考察の対象になっている。
国内外の気鋭のデザイナーやアーティストを起用して、2か月おきに設えを変える銀座メゾンエルメスのショーウィンドウ。〈ポスタルコ〉の主宰者でデザイナーのマイク・エーブルソンによる「ツール・ルーツ」が、7月25日までこのウィンドウを飾っている。タイトルの通り、今回のテーマになっているのは道具の成り立ちについてのリサーチだ。彼らしい柔軟な発想と優れた洞察力、そして独特のユーモアを感じさせるディスプレイは、エキシビションとしても楽しめる深みをそなえている。
エーブルソンは、道具の機能を棒、ロープ、ボウルの3つの要素に還元できるものと考える。この3つの道具は、もちろんそのままでも日常の中で使われている。さらに古今東西の多くの道具は、この3つがさまざまに融合したものととらえることもできる。たとえば歯ブラシは、手に持つ部分は棒であり、先端の毛はロープの一種。チリトリなら、棒と器の要素が融合したものととらえる。こうした関係性が、実物の配置やドローイングなどでショーウィンドウの中に表現されている。
「今回のウィンドウでは、異なるツールを組み合わせたりブレンドしたりすることで、新しいオブジェクトが創造されることを示しました。これはデザインと密接に結びついています。たとえばロープの繊維を棒と組み合わせると、刷毛にも歯ブラシにもほうきにもなる。私は人間と道具との相互作用に魅了されていますが、同時にまた道具同士が互いに影響し合って別の道具になる道筋に魅了されるのです。ツール・ルーツは、こうした考え方を探求するための方法です」とエーブルソン。多様な道具と同様に、〈エルメス〉のいくつかの製品もこの分類に従ってウィンドウの中にディスプレイされている。〈エルメス〉のバッグもまた、ハンドルはロープ、ものを入れる部分は器、というふうに考えることができる。
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土田貴宏
つちだ たかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。
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