DESIGN
Good TOOLS For Me|愛用の酒器を教えてください。
March 15, 2017 | Design | a wall newspaper | editor_Yuka Uchida
3人のゲストに愛用の日用品を教えてもらうコーナー。今回は日本酒が美味しくなるお気に入りの酒器を聞きました。
一合徳利と漆のぐいのみ手酌セット。
若い娘だった頃、手酌でお酒を飲むという状況はさぞかし侘しいものだろうと怯えていたが、四十路を越えてみると、それは、存外楽しいひとり遊びの時間だった。
昨春より、東京〜福島を行き来する生活をしている。東京のひとり暮らしの小部屋には、日本酒の四合瓶が置いてある。いかにも昭和的な酒場で使われているような佇まいの磁器の一合徳利と、漆のぐいのみがそれに寄り添う。外に飲みに繰り出すほどの元気はないけれど、仕事を終えた一区切りにちょっぴりだけ、という晩、ラジオを聴きながら、一口コンロの極小台所で燗をつける。
どちらも福島で求めたもの。ちなみに、ぐいのみのお値段は、ごく普通の居酒屋でたっぷり飲み食いしたくらいで、徳利はといえば、そのお会計のときに渡された小銭程度。この人いいな、と、作り手あるいは売り手に惹かれたとか、その佇まいがどうしようもない懐かしさに満ちているとか、情とお財布とが折り合ったとき、私は新しい酒器を手に取る。
昨春より、東京〜福島を行き来する生活をしている。東京のひとり暮らしの小部屋には、日本酒の四合瓶が置いてある。いかにも昭和的な酒場で使われているような佇まいの磁器の一合徳利と、漆のぐいのみがそれに寄り添う。外に飲みに繰り出すほどの元気はないけれど、仕事を終えた一区切りにちょっぴりだけ、という晩、ラジオを聴きながら、一口コンロの極小台所で燗をつける。
どちらも福島で求めたもの。ちなみに、ぐいのみのお値段は、ごく普通の居酒屋でたっぷり飲み食いしたくらいで、徳利はといえば、そのお会計のときに渡された小銭程度。この人いいな、と、作り手あるいは売り手に惹かれたとか、その佇まいがどうしようもない懐かしさに満ちているとか、情とお財布とが折り合ったとき、私は新しい酒器を手に取る。
木村衣有子
きむらゆうこ 文筆家。お酒ミニコミ『のんべえ春秋』編集発行人。『はじまりのコップ 左藤吹きガラス工房奮闘記』『コーヒーゼリーの時間』『コッペパンの本』など著書多数。
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