DESIGN
ホリデイシーズンを彩る北欧デザイン。新作・復刻・隠れ名作14選|小西亜希子の北欧デザイン通信
December 14, 2020 | Design | casabrutus.com | photo_Naoki Seo editor_Keiko Kusano styling & text_Akiko Konishi
いよいよホリデイシーズン到来。毎年12月になると各都市の屋外でクリスマスマーケットが開かれる北欧ですが、今年はコロナ禍の影響で軒並み中止に。今回は国内で入手可能、この季節に迎えたい、贈りたい。そんな北欧デザインをご紹介します。
●ハンス J. ウェグナーの名作《CH78》“ママ・ベア チェア”がついに復刻!
カール・ハンセン&サン《CH78 MAMA BEAR CHAIR》|デンマーク
デザイン:ハンス J. ウェグナー
1954年に発表されたこのラウンジチェアは、当時はAPストーレン社製の《AP-28》として知られ、長くヴィンテージ市場で高額取引されてきた。PPモブラー社の《パパベア》、〈カール・ハンセン&サン〉から既に復刻している《ミニベア》(CH71)と同じ系譜上にあり、ウェグナーの3部作シリーズと言えるだろう。
今回〈カール・ハンセン&サン〉から復刻された《ママ・ベア チェア》はシンメトリーで比翼のように拡がりを見せる背部と、優美な曲線のフォルムから別名・ウィングバックチェアとも呼ばれている。実際に座ってみると、思いのほか可動域が広く、体勢の変化にも柔軟にフィットする。アーム部分は肘から手先までをしっかりホールド。読書やお茶を飲むにも安定感があり、一切のストレスを感じさせない。人間工学を究めたウェグナーだからこその説得力を体感できる。自宅で過ごす時間が長くなった今、この椅子ならきっと快適な時間を約束してくれる。
デザイン:ハンス J. ウェグナー
1954年に発表されたこのラウンジチェアは、当時はAPストーレン社製の《AP-28》として知られ、長くヴィンテージ市場で高額取引されてきた。PPモブラー社の《パパベア》、〈カール・ハンセン&サン〉から既に復刻している《ミニベア》(CH71)と同じ系譜上にあり、ウェグナーの3部作シリーズと言えるだろう。
今回〈カール・ハンセン&サン〉から復刻された《ママ・ベア チェア》はシンメトリーで比翼のように拡がりを見せる背部と、優美な曲線のフォルムから別名・ウィングバックチェアとも呼ばれている。実際に座ってみると、思いのほか可動域が広く、体勢の変化にも柔軟にフィットする。アーム部分は肘から手先までをしっかりホールド。読書やお茶を飲むにも安定感があり、一切のストレスを感じさせない。人間工学を究めたウェグナーだからこその説得力を体感できる。自宅で過ごす時間が長くなった今、この椅子ならきっと快適な時間を約束してくれる。
●クラシックモダンの再解釈。〈レ・クリント〉から新作《ブーケ》登場。
レ・クリント《ペンダント ブーケ5》|デンマーク
デザイン:センヤ・スヴァー・ダムケア
日照時間の短さや気候といった地形的背景から、家で過ごす時間が長い北欧では、照明文化が古くから発達している。温かみや安堵感を感じる優れた照明デザインが多く、様々な工夫により光が直接目に入らない柔らかい照度のものが多い。世界的にみても暮らしの中での「灯り」に対する意識は高く、キャンドルを灯す文化が根付いている点にも共通している。
1943年にデンマークで創業された〈レ・クリント〉は、オーデンセにある自社の工房で、熟練した職人が1枚のシートに幾何学状に施された複雑なプリーツを、手で織り上げ完成させる、ぬくもりある照明ブランドだ。
新作《ブーケ》は無造作に束ねられたチューリップの姿をヒントにデザイン。複数のシェードが花束のように広がり、編み上げられたリネンのコードは気軽で自由さを感じる。コードの長さを調整するボビンのような形状の留め具にはオーク材を使用。規則正しいプリーツのシェードにこれらの天然素材が組み合わされることで、単なる照明器具から、家具やテキスタイルといったインテリアコーディネートの要素を盛り込む、新しい解釈の製品となっている。
デザイン:センヤ・スヴァー・ダムケア
日照時間の短さや気候といった地形的背景から、家で過ごす時間が長い北欧では、照明文化が古くから発達している。温かみや安堵感を感じる優れた照明デザインが多く、様々な工夫により光が直接目に入らない柔らかい照度のものが多い。世界的にみても暮らしの中での「灯り」に対する意識は高く、キャンドルを灯す文化が根付いている点にも共通している。
1943年にデンマークで創業された〈レ・クリント〉は、オーデンセにある自社の工房で、熟練した職人が1枚のシートに幾何学状に施された複雑なプリーツを、手で織り上げ完成させる、ぬくもりある照明ブランドだ。
新作《ブーケ》は無造作に束ねられたチューリップの姿をヒントにデザイン。複数のシェードが花束のように広がり、編み上げられたリネンのコードは気軽で自由さを感じる。コードの長さを調整するボビンのような形状の留め具にはオーク材を使用。規則正しいプリーツのシェードにこれらの天然素材が組み合わされることで、単なる照明器具から、家具やテキスタイルといったインテリアコーディネートの要素を盛り込む、新しい解釈の製品となっている。
●「普遍的な椅子」の答え《アスラック チェア》が〈アルテック〉から復刻。
アルテック《アスラックチェア》|フィンランド
デザイン:イルマリ・タピオヴァーラ
アルヴァ・アアルトの教えを継承する家具デザイナーのひとり、イルマリ・タピオヴァーラ。アアルトを始め、ル・コルビュジエ、のちにミース・ファン・デル・ローエの元でも経験を積み、生涯にわたり木製家具を追求したデザイナーだ。
「人々のためのデザイン」を信条とし、その背景には戦後の民衆の暮らしに役立つものづくりを、という実直な思いがあった。《アスラック チェア》は1946年に構想を練っていたものの実現に至らず、先に発表されたのは《ドムス チェア》だった。時を経た1958年、経済的に材料を用い、軽量で持ち運びが容易、スタッキングも可能な機能的なデザインとして《アスラック チェア》の大量生産が始まった。
三次元に曲線を描く座面は人の身体に寄り添い、長い間、座っていても疲れにくく、カーブを描く短めの肘置きは、その役割をきちんと果たしながらテーブルに椅子を引き寄せやすいように考慮されている。普遍的な椅子を追い求めたタピオヴァーラの最高傑作は、もしかしたらこの椅子なのかもしれない。
デザイン:イルマリ・タピオヴァーラ
アルヴァ・アアルトの教えを継承する家具デザイナーのひとり、イルマリ・タピオヴァーラ。アアルトを始め、ル・コルビュジエ、のちにミース・ファン・デル・ローエの元でも経験を積み、生涯にわたり木製家具を追求したデザイナーだ。
「人々のためのデザイン」を信条とし、その背景には戦後の民衆の暮らしに役立つものづくりを、という実直な思いがあった。《アスラック チェア》は1946年に構想を練っていたものの実現に至らず、先に発表されたのは《ドムス チェア》だった。時を経た1958年、経済的に材料を用い、軽量で持ち運びが容易、スタッキングも可能な機能的なデザインとして《アスラック チェア》の大量生産が始まった。
三次元に曲線を描く座面は人の身体に寄り添い、長い間、座っていても疲れにくく、カーブを描く短めの肘置きは、その役割をきちんと果たしながらテーブルに椅子を引き寄せやすいように考慮されている。普遍的な椅子を追い求めたタピオヴァーラの最高傑作は、もしかしたらこの椅子なのかもしれない。
●オイバ・トイッカの遊び心が詰まったガラスオブジェたち。
イッタラ《フルーツ&ベジタブル》|フィンランド
デザイン:オイバ・トイッカ
フィンランドを代表するアーティスト、オイバ・トイッカは1950年代にフィンランドのアラビア製陶所でそのキャリアをスタート。1963年からヌータヤルヴィのガラス工房で専属デザイナーとして《カステヘルミ》、《フローラ》ほか〈イッタラ〉のバードシリーズ(40年間で500羽以上のバードを生み出したそう!)等、数々の名作デザインを産んだ大御所として、あまりにも有名だ。
「完璧を求めず、楽しさを求める」という言葉を残したオイバが1989年に発表した《フルーツ&ベジタブル》が復刻登場している。ここではアップルとズッキーニを紹介しているが、他にもオニオン、パンプキン、ナスやグレープの7種類がラインナップ。1970年代にメキシコやアフリカを訪問、以降、彼のデザインは題材、フォルム、色使いともにポップで楽しげな作風のものが増えており、この《フルーツ&ベジタブル》も部屋に飾るだけで思わず気分が上がるような作品。もちろん、〈イッタラ〉の工房でバードシリーズを製作している職人たちが1点1点マウスブローで製作している。アートピースとしても大切にしたいコレクションだ。
デザイン:オイバ・トイッカ
フィンランドを代表するアーティスト、オイバ・トイッカは1950年代にフィンランドのアラビア製陶所でそのキャリアをスタート。1963年からヌータヤルヴィのガラス工房で専属デザイナーとして《カステヘルミ》、《フローラ》ほか〈イッタラ〉のバードシリーズ(40年間で500羽以上のバードを生み出したそう!)等、数々の名作デザインを産んだ大御所として、あまりにも有名だ。
「完璧を求めず、楽しさを求める」という言葉を残したオイバが1989年に発表した《フルーツ&ベジタブル》が復刻登場している。ここではアップルとズッキーニを紹介しているが、他にもオニオン、パンプキン、ナスやグレープの7種類がラインナップ。1970年代にメキシコやアフリカを訪問、以降、彼のデザインは題材、フォルム、色使いともにポップで楽しげな作風のものが増えており、この《フルーツ&ベジタブル》も部屋に飾るだけで思わず気分が上がるような作品。もちろん、〈イッタラ〉の工房でバードシリーズを製作している職人たちが1点1点マウスブローで製作している。アートピースとしても大切にしたいコレクションだ。
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illustration Yoshifumi Takeda
小西亜希子
こにし あきこ 1990年代後半からミッドセンチュリー、北欧デザインを専門としたインテリア業界にて活動。MD、商品開発、PR、企画、VMDから、ブランドディレクションまでこなす。著書に『カイ・フランクへの旅』(グラフィック社)。
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