DESIGNPR
カッシーナが捧げる、 ジャンヌレへのオマージュ。
『カーサ ブルータス』2020年7・8月合併号より
July 9, 2020 | Design, Architecture | PR | photo_Masaki Ogawa styling_Masato Kawai text_Takahiro Tsuchida
巨匠ル・コルビュジエとの協業で知られるピエール・ジャンヌレ。彼がインド・チャンディガールの都市計画の一環として自ら手がけたとされる伝説的な家具を、〈カッシーナ〉が甦らせた。
・インドに花開いたモダニズム、その遺産を継承する意味。
チャンディガールの建築群は、ル・コルビュジエの代表作として世界文化遺産に登録されている。その家具は、上質なモダニズムと地域性を反映する。
イタリアの〈カッシーナ〉は、20世紀建築の巨匠であるル・コルビュジエがデザインした家具を、半世紀以上にわたり製造してきた。その大半が、1920年代に彼の設計事務所に在籍したシャルロット・ペリアンとピエール・ジャンヌレとの共作だったことはよく知られている。その後、ペリアンはインテリアデザイナーとして独立し、世界的に活躍。そしてジャンヌレは、一時は独立して自身の道を歩むものの、50年からル・コルビュジエが取り組んだインドのチャンディガールの都市計画のため、再び手を組むことになった。
巨匠の指揮の下、ジャンヌレはそのチーフアーキテクトとして14年間にわたり現地に滞在する。彼らは従兄弟同士でもあり、揺るぎない信頼関係があったのは間違いない。チャンディガールのプロジェクトは、ル・コルビュジエの生涯で実現した唯一の都市計画として歴史に刻まれていった。
チャンディガールの建築群は、ル・コルビュジエの代表作として世界文化遺産に登録されている。その家具は、上質なモダニズムと地域性を反映する。
イタリアの〈カッシーナ〉は、20世紀建築の巨匠であるル・コルビュジエがデザインした家具を、半世紀以上にわたり製造してきた。その大半が、1920年代に彼の設計事務所に在籍したシャルロット・ペリアンとピエール・ジャンヌレとの共作だったことはよく知られている。その後、ペリアンはインテリアデザイナーとして独立し、世界的に活躍。そしてジャンヌレは、一時は独立して自身の道を歩むものの、50年からル・コルビュジエが取り組んだインドのチャンディガールの都市計画のため、再び手を組むことになった。
巨匠の指揮の下、ジャンヌレはそのチーフアーキテクトとして14年間にわたり現地に滞在する。彼らは従兄弟同士でもあり、揺るぎない信頼関係があったのは間違いない。チャンディガールのプロジェクトは、ル・コルビュジエの生涯で実現した唯一の都市計画として歴史に刻まれていった。
2016年、ル・コルビュジエの建築作品群はユネスコの世界文化遺産に登録された。チャンディガールの行政庁舎、立法議会棟、高等裁判所が集中するキャピトル・コンプレックスも、その対象になっている。これまで〈カッシーナ〉は、ル・コルビュジエ財団と共に彼について調査研究を進めてきたが、世界遺産登録を受けてチャンディガールの研究を本格化。ジャンヌレの功績があらためて評価され、彼が都市計画に際して手がけたと見られるバリエーション豊かな家具にも光が当てられた。
チャンディガールにおいてジャンヌレは、キャピトル・コンプレックスの建築物はじめ、市内の大学、図書館、住宅などの家具を新たにデザインしたとされる。その特徴は、周辺地域で採れたチークの無垢材を使い、逆V字形のフレームを多用したことだ。先端に向けてテーパーした脚部は、構造的に理に適っている。またフレームに曲線を用いず、全体を直線的に構成したのは、工業化が進んでいなかった地元の家具工房への配慮かもしれない。だからこそ少々無骨だが、モダンで力強いシルエットが生まれた。
チャンディガールにおいてジャンヌレは、キャピトル・コンプレックスの建築物はじめ、市内の大学、図書館、住宅などの家具を新たにデザインしたとされる。その特徴は、周辺地域で採れたチークの無垢材を使い、逆V字形のフレームを多用したことだ。先端に向けてテーパーした脚部は、構造的に理に適っている。またフレームに曲線を用いず、全体を直線的に構成したのは、工業化が進んでいなかった地元の家具工房への配慮かもしれない。だからこそ少々無骨だが、モダンで力強いシルエットが生まれた。
籐張りの座面が多いのも、現地での作業が可能で、インドの気候に向いていたからだろう。一方、高等裁判所などには、パッディングを施した安楽性の高い椅子も置かれた。逆V字形の構造は共通でも、プロポーションや素材の組み合わせにより、その場に応じたデザインを巧みに生み出したのだ。
今回、〈カッシーナ〉は、キャピトル・コンプレックスで使われてきた4種類の家具の製造を開始した。これは正確には「復刻」でなく、ジャンヌレへのオマージュなのだという。その理由を、〈カッシーナ〉のアーカイブ担当でキュレーターのバーバラ・レーマンは、こう説明する。
「私たちはデザインの真正性(オーセンティシティー)を最大限に尊重します。チャンディガールの家具は、地元の職人によってディテールの個体差がある状態で製造されてきました。そのため、実在する作品をオリジナルモデルであるとは言い難いのです。ジャンヌレがチャンディガールの設計の主要人物であり、多くの家具の作者だと考えられますが、証拠書類はありません。だから彼へのオマージュなのです」
今回、〈カッシーナ〉は、キャピトル・コンプレックスで使われてきた4種類の家具の製造を開始した。これは正確には「復刻」でなく、ジャンヌレへのオマージュなのだという。その理由を、〈カッシーナ〉のアーカイブ担当でキュレーターのバーバラ・レーマンは、こう説明する。
「私たちはデザインの真正性(オーセンティシティー)を最大限に尊重します。チャンディガールの家具は、地元の職人によってディテールの個体差がある状態で製造されてきました。そのため、実在する作品をオリジナルモデルであるとは言い難いのです。ジャンヌレがチャンディガールの設計の主要人物であり、多くの家具の作者だと考えられますが、証拠書類はありません。だから彼へのオマージュなのです」
Loading...